インクルーシブ教育について (12月一般質問より)

2015年12月27日 09時46分 | カテゴリー: 活動報告

 インクルーシブ教育は、「障害の有無によらず、誰もが地域の学校で学べる教育」という定義が一般的です。
 
大和市も超高齢社会に突入しています。齢をとれば体の自由がきかなくなり、互いの助けが必要となります。介護保険制度が変わり、かつ格差社会が広がる中で、お互いの助け合いや支え合いがなければ少子高齢社会に対応できない時代が来ています。「共生社会」を実現するためには、市民ひとりひとりがその必要性を認識することが重要です。一人ひとり誰もが違って当たり前という多様性を受け止め合えるように子どもたちを育むこと、それこそが豊かな社会であり、教育です。「インクルーシブ教育」は「共生社会」への実現の第一歩です。子どもたちへの教育が変われば、大人も変わっていくはずです。
 
12月の一般質問では、1、大和市の取り組みについて 2、教職員に対する取り組みについて 3、いじめ問題に関連して 4、学校全体の取り組みについての4項目にわたり、質問を行いました。
 
市長、教育長の答弁は、残念ながら取り組みに対する積極性は感じられませんでした。しかし、「大和市障がい者福祉計画」の中で大和市は、施策の方向として「保育園・幼稚園・学校でインクルーシブ教育を推進します」と明記しています。
 
一つの教室の中で、多様な子どもたちが一緒に過ごすインクルーシブ教育は、障がい児ばかりではなく、全ての子どもに思いやりと多様性の理解を与えることのできる重要な施策です。適切な計画がなされれば、人権への理解、学習、いじめ問題などに対しても成果が上がることが考えられます。
 
豊かな社会を目指すため、全ての人たちへの理解を深め、大和市においても積極的に取り組むよう、これからも提言していくつもりです。

 

 以下、全文を掲載します。

  「インクルーシブ」は英語の形容詞で「含めて」という意味ですが、現在、日本では「インクルーシブ教育」という用語の中で主に使われています。
 
「障がいの有無によらず、誰もが地域の学校で学べる教育」という定義が一般的ですが、インクル―ジョンという用語はマイノリティーグループが被っている様々な権利侵害や不利益を解消することを意味するとされていることからもわかるように「全ての子どものための教育」、一人一人誰もが違うことを前提にした教育、と言い換えることもできます。
 
意味の似た日本語に「共生社会」というものがありますが、文部科学省はこの言葉について「これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。このような社会を目指すことは、我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題である。」と述べています。
 
本市も超高齢社会に突入しています。齢をとれば体の自由がきかなくなり、互いの助けが必要となります。介護保険制度が変わり、かつ格差社会が広がる中で、本市でも、お互いの助け合いや支え合いがなければ少子高齢社会に対応できない時代が来ています。「共生社会」を実現するためには、市民ひとりひとりがその必要性を認識することが重要です。一人ひとり誰もが違って当たり前という多様性を受け止め合えるように子どもたちを育むこと、それこそが豊かな社会であり、教育です。「インクルーシブ教育」は「共生社会」への実現の第一歩です。子どもたちへの教育が変われば、大人も変わっていくはずです。

 1 大和市の取り組みについて

  1994年「サラマンカ宣言」が出されてから、「特別な教育ニーズ」がある子どもでもよほどの事情がない限りインクルーシブ教育を受けるべきであるとする国際的な流れがあります。
 
神奈川県教育委員会は、障害のある子どもたちに対する教育の進むべき方向を「共に学び共に育つ教育」と定め、「神奈川県特別支援教育推進協議会の提言」においても支援教育の方向性として「効果的に一人ひとりに応じた指導や支援ができる多様な教育の場を用意するのではなく、通常級で、同一空間、同一時間、同一内容で学ぶことを基本とすべきである」としています。
 
本年度から神奈川県において「インクルーシブ教育推進課」ができ、県も対策を進めています。しかし、現状においてはまだまだインクルーシブ教育は理想の域を出ていません。加えて本市には外国籍の市民も多く住んでいるという特殊事情があります。教育長は、何年も前から外国につながる子どもたちへの支援を続けてこられました。多様性社会への認識を十分にお持ちのことと思います。
 
そこで質問します。

1、インクルーシブ教育と共生社会について市長はどのように考えておられるか。

  答弁→・誰もが相互に人格と個性を尊重し、支え合い、人々の多様な在り方を認め合う「共生社会」は本市の目指すところ。
・今年3月に策定した「大和市障がい者福祉計画」にも、その理念を含み、市民が住みやすい街づくりに努めている。
・また共生社会の形成に向け、国が推進するインクルーシブ教育システムの理念や、その構築に向けた特別支援教育の取り組みにつきましても、承知している。
・一人ひとりの子どもにとって、必要な教育環境は様々であるため、学校教育において何が必要か、どうあるべきかについて、教育委員会と協議していく。

  2、大和市のインクルーシブ教育の現状と今後の展望について、教育長はどのように考えておられるのか。

答弁→・現在は、教員への研修、個々の教育的ニーズへの対応、環境整備に努めている。
・インクルーシブ教育導入に向けては、今年度から神奈川県でもモデル校を設置したところ。
・本市では、現在でも、同じ場で共に学ぶ場面として、通常の学級や通級による指導、また各行事への参加などを実施しているが、今後については、県の状況を注視しながら、連続性のある「多様な学びの場」について、検討していく。

 2、教職員に対する取り組み

  特別支援学級の子どもと教師自身が交わり、子どもたちの交流に理解のある校長のもとでは、学校全体がうまくいくといわれています。学校内の教育の取り組みは、校長の意思、裁量が大きく関わっています。また、教職員の対応により、障がいがある子どもに対する健常の子どもの目や行動は大きく変わります。障害に対する知識を持つことで、トラブルに発展しかねない子どもの発言や行動を判断し、適切に処理することが可能になることから、教職員への研修は重要です。
 
そこで質問します。
1、
インクルーシブ教育推進に関して、校長へはどのような研修、取り組みを行っているのか。

答弁→新任校長研修会においてインクルーシブな学校づくりに関して県が研修を行っている。

2、インクルーシブ教育推進に関して、小中学校の教職員へはどのような研修、取り組みを行っているのか。

答弁→教員の初任者研修において県が特別支援教育について研修を行っている。また、夏に市の研修としてインクルーシブ教育システムの構築に関して特別支援学級の担任以外に1人以上の教員が出席を要する研修を行っている。6月~7月にヘルパー、スクールアシスタント向けの研修を行っている。

 3 いじめ問題に関連して

 インクルーシブ教育は、障がい児のためだけのものではありません。学校内には、貧困や虐待にさらされている、外国につながるなど様々な立場にある子どもたちが存在します。ひとの心に余裕がないとき、攻撃が他者に向かいやすいことは学校内に限らず、社会全般に言える悲しい事実です。
 
「ポジティブ心理学」と呼ばれる分野の研究者によると、人は「利他的な行動をすると幸福度を高める」ということがわかっているそうです。使い道を指示してお金を渡した実験では、自分のために使うように指示したグループと他人のために使うよう指示したグループでは、後者で幸福感が高くなったという結果が出ています。
 
「クラスの男の子とけんかして困っていた時に友達が助けてくれた」「学校の帰りに地域の人たちが『おかえり』と言ってくれた」「友達を手助けしたときに『ありがとう』と言ってくれた」など、子どもが感じることのできる幸せの瞬間は、ごく日常の些細なことに潜んでいます。
 援助すること、されること。これはインクルーシブ教育が進められるとクラスの中で日常的に見られる情景になるはずです。例えば体の不自由な子どもの場合、介助が必要な場面が多くなります。援助したとき、素直に「ありがとう」と言ってもらえる経験を積んだ子どもたちは、幸福感が増すはずです。そして自分がもし援助される場合に思いが至った場合、「ありがとう」と素直にいえることの素晴らしさに目覚め、「できる、できない」で人を判断せず、心のやさしさや素直さが大切であることがわかるようになるはずです。
 具体的には、現在においても特別支援学級から放課後児童クラブへの移動支援は、交流学級の子どもたちが行うことも可能かと思います。大人が見守り、子どもたちが行うことが可能な支援も「安全面の配慮」一言で子どもたちからインクルーシブ教育の機会を奪っているともいえます。「安全の確保」が必要な場面は、子どもたちに『支援が必要な人には、どのような配慮をすればよいのか』を覚えてもらう絶好の機会です。これは大人になって様々な場面に出くわした時にも役立つ貴重な経験です。無論、安全面の配慮から大人が立ち会う必要はあるでしょうが、支援を子供たちの手にゆだねることも考え始めるべきではないでしょうか。
 インクルーシブ教育の推進は、子どもたちの思いやりを育み、自らの幸福感を増す機会を多く持ち得ることで、いじめ問題の対策としても有効であると考えられます。お互いの素晴らしさを付き合いの中で学ぶ機会を積極的に設けてほしいと思います。
 そこで質問します。

・インクルーシブ教育の理念は、いじめ問題対策にもつながると考えるが、どうか。

答弁→・いじめ問題には、自他を尊重する心を育むとともに、互いの存在を認め合う学級づくりを進めることが重要であると、認識している。
・これは、集団の中で互いを理解しながら、社会性や思いやりの心を育むという、インうルーシブ教育の理念と、共通する部分があると考えられます。

 4 学校全体の取り組みについて

 特別支援学級についての市内小中学校の教職員に対する研修は、現在年に1回行われていますが、全ての教職員の参加には程遠いのが現状です。時間的にも場所的にも全体の研修は困難なものがあると予想されますが、各学校内では早急にインクルーシブ教育を教職員に対して行う必要があります。
 「共に学ぶ」インクルーシブ教育は、県が強力に推し進めているものでもあり、これから特別支援学級を閉鎖し、全ての子どもが普通学級に入るかもしれない時代がやってきます。教職員一人一人が障がい児を含めた学校内の子どもの特質を知ることはとても大切です。
 まずは、困難な状況にある子どもへの対応がうまくいった事例の報告の場を持ち、そのやり方を学ぶなど、普通学級でも特別支援学級でも教職員にとって指導しやすい環境が作れるようにすべきではないでしょうか。
 
また、保護者の意識を変えていくことも大切です。家庭内での保護者の発言の影響は子どもにとって極めて大きいといえます。
「大和市教育基本計画」によると、保護者の多くが学校教育に大切なこととして「思いやりの心を育むこと」(小学校50.2%、中学校42.2%)「円滑な人間関係を築くようにさせること」(小学校52.1%、中学校51.7%)をあげています。多様な環境の子どもたちの中にあえて自分の子供を入れるために公立小中学に通わせているという意識の親は数多く存在すると思われます。私の周りでもはっきりそう言っている人がいました。
 
調査では、家庭教育として大切だと思うことに小学校で79.2%、中学校で75.2%の保護者が「人を思いやる心を育てること」をあげています。
 
しかし、一般の市民にとってインクルーシブという言葉や概念はなじみが薄いといわざるをえません。学校を変えていくには、保護者の理解、共感がとても重要です。概念の知識がないために、無意識に差別的発言をし、子どもに影響を与えてしまう保護者の存在を少しでも減らす努力を学校側からしていくべきと考えます。
 
そこで質問します。

1、インクルーシブ教育に関しては学校全体で取り組んでいく必要があると考えるがいかがか。

答弁→多様な子どもたちのニーズに応えていくためには、校長のリーダーシップのもと、支援体制を確立し、学校全体で取り組むことが必要であると認識している。

2、 インクルーシブ教育の考えを保護者にも積極的に周知していく必要があると考えるがいかがか。

答弁→インクルーシブ教育についての正しい理解を促すために、研修会や講演会などの情報をPTAを通して情報提供してまいります。

 ご答弁、ありがとうございました。

 今年3月に策定した「大和市障がい者福祉計画」の中で市長は、「『健康都市』の実現を目指す本市では、基本目標の一つに「一人ひとりがいつまでも元気でいられるまちづくり」を掲げています。そこでこの新計画では、基本理念として「一人ひとりが、地域の一員として『私』らしく生活しているまち」を掲げ、市民一人ひとりが地域の一員として尊重され、安心して自分らしく自立した生活を送ることができる地域社会にすることを目標としました」と述べられています。また、「計画」の中では、施策の方向として「保育園・幼稚園・学校でインクルーシブ教育を推進します」と明記しています。
 
「共生社会」は本市の目指すところと市長は答弁されました。また、教育長は、「多様な学びの場について検討していく」と述べられました。
 インクルーシブ教育は、「共生社会」や「多様性」についての理解を深め、自分らしく生きていくためには欠かせないものです。また、現在の学校生活でも一人ひとりが互いを認め合う認識を持つことによって、いじめ防止にも有効となる理念です。
 
教職員に対する取り組みに関しては、本市は、特別支援教育の充実をはかることを目的として「特別支援教育研究事業」を、直営の「特別支援教育研究所」に委託して行っています。その事務事業評価(平成27年、26年度分)では、「教員間の情報交換等を通じて相互の教育技術の向上を図ることができる」ことを成果とし、「特別支援学級の在籍者数の増加や、支援を必要とする児童生徒の個々のニーズが多様化して」おり「担当教員による共同研究を行うことにより、教育技術の向上が必要であるため、現状のまま継続して事業を実施する」としています。継続はともかく、現状のままというのはいかがなものでしょうか。インクルーシブ教育の推進のためにも、特別支援教育の積極的な取り組みをお願いします。
 
学校での取り組みには、校長の強いリーダーシップが必要です。校長自らインクルーシブ教育に対する知識を深め、教職員や保護者たちと理念を共有することによって、一人ひとり誰もが違って当たり前という多様性を受け入れることができる子どもたちが育まれるはずです。市や教育委員会、学校が一丸となり、インクルーシブ教育を推進していかれるよう強く要望します。

 

参考文献(一部、引用した部分があります)

 障がい児を普通学級へ・全国連絡会編「障害児が学校へ入ってから」千書房

乾美紀・中村安秀編著「子どもにやさしい学校」ミネルヴァ書房

後藤芳一・星川安之「共用品という思想」岩波書店

伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」光文社新書

島井哲志「幸福の構造」有斐閣