中学生の学習支援について(12月 一般質問より)

2015年12月29日 10時31分 | カテゴリー: 活動報告

   大和市では、平成27年度から全小学校で放課後の学習支援である「放課後寺子屋やまと」事業を展開しています。これは全ての児童が対象で、家での学習習慣のない子どもたちが意欲に目覚めるなど、その効果が報告されています。これからも推進してもらいたい事業ですが、将来に係る学習は中学生、特に高校進学が目前の中学3年生への支援こそが重要です。

 子どもへの教育費は年々負担が増し、高校進学に向けた塾代の捻出は一般家庭においても容易ではありません。子どもの貧困が問題になる中、生活困窮家庭においては、子どもへの教育にお金をかける余裕はないと予想されます。

 生活困窮者自立制度がこの4月から始まり、任意事業として「学習支援」の導入が求められています。進学率を向上させ、学歴を獲得した後に正規雇用の職に就くことは、貧困の連鎖を止めるためにも必須です。

 この度の一般質問により、大和市は生活困窮家庭の子どもに限らず、全中学生の学習支援を行うよう検討していくという姿勢を示しました。ピンポイントの学習支援は、子どもの心に傷を残す可能性があるなど、対応が困難な状況も考えられます。しかし、生活困窮家庭の子どもは、学習の他にも家庭生活を十分体験していないなどの問題も抱えています。経済的な理由や保護者の考え方の影響などで「どうせ自分は」という否定的な自己像を持つ子どもは多く存在します。学習支援とともに、困難な家庭状況にある子どもたちには、学校以外の居場所を作ることも重要です。意欲のある子どもには、経済的な理由で自分自身の可能性や夢をあきらめてしまうことのないよう、また学習が困難な子どもには、自立に必要な最低限の学力をつける場を作ることもこれからの自治体には求められていると思います。

 

  以下、全文を掲載します。
 
議会当日は時間の都合により割愛した部分も含まれています。

  

 中学生の学習支援について

 1、大和市における貧困の状況について

 わが国の子どもの貧困率16.3%、実に6人に1人が貧困の状況にあるという衝撃的な報告がなされてから、最近、子どもの貧困が大きくローズアップされています。

 2014年1月には、『子どもの貧困対策推進法』が施行。8月に閣議決定された『子どもの貧困対策に関する大綱』では、「子ども貧困対策に関する基本的な方針」、「子どもの貧困率、生活保護世帯に属する子どもの高等学校等進学率等子どもの貧困に関する指標及び当該指標の改善に向けた施策」を定め、また、「児童養護施設等に入所している子どもや生活保護世帯の子ども、ひとり親家庭の子どもなど、支援を要する緊急度の高い子どもに対して優先的に施策を講じるよう配慮する必要がある」と言及しています。
 
それを受けて神奈川県においても平成27年3月、「神奈川県子どもの貧困対策推進計画」が発表され、対策として、教育支援、生活支援、保護者の就労支援、経済支援をあげています。また、この4月には「生活困窮者自立支援法」が施行され、国全体をあげて、貧困対策に取り組む時代になっています。

 諸外国の飢餓に苦しむ「絶対的貧困」状態にある人々とはちがい、日本の「相対的貧困」は、目で見てすぐに問題意識に上がるものではありません。しかし、普通の人々が当たり前に享受していることができないという状況は、人々の、特に子どもたちの心と体を徐々に蝕んでいく、重大な問題です。

 12月3日の新聞報道にあった通り、本年7月から11月にかけて日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した研究調査報告では、この問題が、経済対策としても重要な課題であることを浮き彫りにしています。現在15歳の子どもを対象にした研究結果だけですが、その数字には驚くべきものがあります。現在、大学や専門学校などへの進学率は、全体で80%に達していますが、ひとり親家庭、生活保護家庭、児童養護施設の子どもたちなど貧困世帯の子どもの進学率は、32%。また正社員への就業率は、45%であると推計しています。何らかの対策が行われ、進学率や正社員としての就業率が上がれば税金などの収入も将来的には上がるはずですが、対策を施さず放置すれば経済損失は2.9兆円に及び、国の財政負担は1.1兆円増えるとのこと。「慈善事業ではなく、経済対策として捉え、官民で取り組むべきだ」と提言しています。

 また、子どもの貧困の問題は、少子化や人口減少対策にも大きく関わっています。「一億総活躍社会」を目指して安倍内閣は、希望出生率1.8の実現を掲げ、本市でも「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で国の長期ビジョンに準じて人口置換水準である出生率2.07を目指しています。この目標は「結婚している人が希望する子どもの数を産み、結婚したい人が結婚して希望する数の子どもを産む」ことで達成するとされますが、現在の社会状況においては、誰もが疑問視せざるを得ないただの理想でしかありません。

 内閣府の「子供の貧困対策に関する有識者会議」構成員である渡辺由美子氏の指摘によれば、「希望する子ども」を産まない最大の原因は「子育てや教育にお金がかかりすぎているから」です。「結婚については正社員の若者は34歳までに58%が結婚しているが、非正規になると23%に落ちる。若年層の非正規雇用は急激に伸びており、今や3人に1人が非正規であり、その内の8割弱は結婚しない。つまり、経済的理由から結婚も子どもを持つことも「できない」若者が急増している」とも述べています。つまり、教育格差をできるだけなくし、進学率を上げ、正規社員を増やすことが求められます。子ども、若者の貧困問題を解決しない限り、人口減少の歯止めにはならないということです。

 私の経験からも「教育」にはお金がかかりすぎると思います。長女は今年、県内の高校に進学しました。中学生の時には、大和市内でも多くの生徒が通う学習塾に行っていました。中学3年時の塾にかかった費用を計算したところ、夏期、冬期講習なども含めると約50万円になりました。最近増えている個別学習の塾ではさらに多額の費用がかかります。これは、保護者にとって、とてつもなく大きな負担です。専業主婦だった人も、子どもが中学に入ると塾代を捻出するために働きに出るケースが多くあります。しかし、生活に困窮している世帯では、とても子供の進学のために新たに塾費用を捻出できるとは思えません。

 先に見たとおり、日本の将来のためには貧困の連鎖を止め、教育格差をなくすことは喫緊の課題です。本市もその対策に一刻も早く取り組む必要があります。

  本市は現在、「生活困窮者自立支援法」の必須事業である「自立相談支援事業」と「住居確保給付金の支給」は行っていますが、子どもの貧困の連鎖を止める施策である「子どもの学習支援」には着手してはおりません。しかし、周りを見回しても病気などで働けない親に育てられている、あるいは母一人の手で育てられており、貧困状況のただ中にいる子どもは確実に存在します。その数を把握することが、対策につながります。

 そこで質問いたします。

 1.大和市立中学校在籍生徒の内、「就学援助費」受給者は何人か。その受給率は何%か。

答弁→平成26年時点 1639人 29.34%

 2.大和市立中学校在籍生徒の内、「生活保護」受給者は何人か。その受給率は何%か。

答弁→全生徒5517人中 生活保護受給者は108人 2.0%

 

2、子どもの貧困と進学率について

  子ども期の貧困は、成長した後にも継続して影響を及ぼすことは、様々なデータから明らかになりつつあります。阿部彩著「子どもの貧困」(岩波新書)によると、実証的に検証している研修は諸外国には多く存在しています。

「たとえば、アメリカのある研究においては、25歳から35歳の成人の勤労所得、(成人となってからの)貧困経験が、どれほど子ども期(5歳から18歳)の世帯所得に影響されているかを分析しており、特に男性の勤労所得や賃金(時給換算)、貧困経験が、子ども期の貧困に直接影響されていると報告されている」
「また、別の研究においては、1957年に高校を卒業した1万人以上の人々を34年後の1991年にフォローアップして調査している。これによると、高校卒業時点での親の所得は、最終学歴や大学進学率に響いていただけでなく、52歳時点での就労状況、勤労所得にも影響していると報告されている」などです。

 日本においては、このように長期にわたってフォローした調査はないようですが、この筆者らが行った東京近郊の地域において20歳以上の男女1600人を対象とした「社会生活に関する実態調査」の中で「15歳時点での生活状況」という項目を加えたところ、子どもの時点と現在の生活に大きな影響があるという結果が得られたということです。15歳時点での貧困は、教育の機会が限定され、その結果職に恵まれないことによって低所得となり、低い生活水準となるという図式が浮かび上がります。

 貧困の連鎖とは、低所得の状態にある家庭で成長することで、社会人として自立するために必要な教育や技能を身につける機会を逸したり、修復する意欲を失ったりすると、その子ども自身も将来、低所得の労働者となり、結婚や子育てに影響してくる恐れがあるという問題です。それが日本の経済や少子化にも大きく関わることは、先に述べたとおりです。

 生活困窮家庭においては、学力格差を生じる3つの要因があるといわれています。
 
ひとつは「塾などの教育投資を行うことができない」経済的要因
 
ひとつは「家庭において親が子供の勉強を見たりゆとりをもって子育てができない」ストレス要因
 
もう一つは「家庭に落ち着いて勉強する場所がない」環境要因です。
 
その結果、生活困窮家庭の子どもたちに様々な問題があることが学校や支援NPOなどから指摘されています。

 きちんと字が書けることや簡単な漢字の読み、九九のできない高校生の存在。風呂に入る習慣がない、家で料理を作ってもらったことがない、ひとりで電車に乗ったことがない、レストランに行ったことがないなどの生活経験の欠如による生活力不足。親自身が劣悪な環境の職業についていたり、所得が低いことによって学業や勤労に対して「悲観的」な考えを持つようになり、その考えが子どもに継承される「マイナスのモデル」。その結果、子どもも将来の希望が持てないこと。経済困窮や複雑な家庭事情により自尊感情や自己肯定感を持てず、基本的信頼関係の欠如による対人関係のスキル不足。などなどです。

 もちろん、金銭的余裕がない中でもしっかり子育てをしている保護者の方、また劣悪な環境の中にあっても自らの努力により、未来を切り開いていこうとしているお子さんもいることでしょう。しかし、せっかく努力の結果進学できても金銭的理由で退学を余儀なくされる子どもが存在するのも事実です。
 
大和市においては、経済的理由での進学状況はどうなっているのでしょうか。

そこで質問します。

 1.大和市における過去3年間の全中学生の全日制高校進学率は何%か?

  答弁→平成24年 87.9%
     平成25年 88.0%
     平成26年 88.3%

 2.大和市における過去3年間の生活保護受給者の全日制高校進学率は何%か?

  答弁→平成24年 56.1%
     平成25年 49.0%
     平成26年 69.7%

 3、本市の取り組みについて

  大和市は平成27年度から全小学校において「寺子屋やまと」事業を行っています。これは希望するすべての子どもに対し行うもので、学習習慣がつくようになったなど、効果も表れている大変評価できる事業です。先に例示した、きちんと字が書けることや簡単な漢字の読み、九九の習得など、最低限必要な学力を小学生の時に全ての子どもにつけさせるには有効な手段です。

 生活困窮者に対する限定的な支援は、学校の中の取り組みには向きません。学校内で一部の子どもにだけ支援を行うことは差別につながり、当事者の子どもの心にも傷を与えることになりかねません。学校では全ての子どもの学力向上を目指し、生活困窮家庭の子どもに対しては、新たな施策を展開していく必要があります。しかし、学校と福祉の連携もまた重要です。
 
そこで質問いたします。

 1.学習支援が必要な子どもに対し、中学進学後のフォローにつなげるシステムはあるのか?

 答弁→全児童に対して個々の学習状況や配慮事項などについて中学進学時に引継ぎを     行っている。特に指導の必要な生徒には、進学後も見守り、面接や学習指導を行っている。

 2、家庭や学力に問題のある子どもに対して、市政において教育委員会と福祉との関係はどうなっているのか?

 答弁→学校からの要請に応じて校内のカンファレンスに担当ケースワーカーが参加して    いる。保護者と連絡が取れない場合など、学校からケースワーカーに連絡している。

 3、生活困窮者自立支援制度の国の方針に基づき、大和市は現在、どのような取り組みを行っているか?これからどのような取り組みを行う予定か?

市長答弁→本制度は、本年4月から始まったものであるが、任意事業については各自治体がその必要性を判断して取り組むものとされている。生活困窮家庭の子どもたちへの学習支援に関しては重要と認識しているが、小学校では全ての児童を対象とした放課後寺子屋やまと事業を既に展開していることから、任意事業として個別に実施していない。中学校についても生活困窮者に関わらず、今後全ての児童を視野に入れた学習支援の実施について前向きに検討していく。

 

  ご答弁、ありがとうございました。

『子どもの貧困対策に関する大綱』『神奈川県子どもの貧困対策推進計画』では施策として、①教育支援 ②生活支援 ③保護者の就労支援 ④経済支援 をあげています。この重点施策は、「当面5年」を計画期間としていますが、子どもにとっての5年間は、大人にとってのそれとは大きく意味合いが違います。

 まずはその一つ学習支援から、一刻も早く取り掛かるべきです。事業を始めることにより、問題がより明確に見えてくるはずです。

  就学援助費を本市の約30%の中学生が受給している事実には、驚かざるを得ません。生活保護基準の1.5倍までを準用保護世帯の対象とし、就学時などに保護者に向けて積極的に周知している本市の取り組みは評価に値します。しかしながらこの事実は、本市には子どもを学習塾にまで通わせることができないと思われる生活困窮世帯が多いこともまた示しています。

 全日制高校という一つの目安ではありますが、生活保護世帯における進学率は本市においても一般家庭よりも低いこともわかりました。学習支援事業の推進は急務です。子どもたちを支援していくことを検討するという姿勢に期待いたします。

 現在、生活困窮者に対する中学生の学習支援は、神奈川県内では、横浜市で20事業、川崎で8事業の他、横須賀市、藤沢市、厚木市、相模原市、座間市、伊勢原市、秦野市、小田原市で行っています。本市においてはこれらの市の取り組みを参考にしながら、進めていってほしいと思います。

 意欲のある子どもに対しては、経済的な理由で、自分自身の可能性や夢をあきらめてしまうことのないようにしてほしいと思います。学習支援の場は奨学金制度など、行政の様々な支援を紹介できる場となるはずです。低学力の子どもに対しては、少なくとも自立の基礎をつくるための最低ラインを死守することが重要です。この点、本市で行っている寺子屋やまとを最大限、活用してほしいと思います。現在、行っている小学校から中学校への引継ぎがより強いものとなるよう、さらに連携が強まるよう、期待いたします。

 また、様々な事情により家庭生活が不安定な子どもたちには一定の自尊感情や自己肯定感を取り戻すことができるような安心できる家庭的な居場所を提供することも大切です。

 他市の取り組みでは、学習支援とともに「居場所づくり」に力を入れているところが多くあります。委託事業にする場合には、「居場所づくり」に力を入れているNPOの選択など、充分に考慮するべきと考えます。学力とともに生活力を付けることにより、自立への足掛かりとなりえます。

 学習支援員はできれば有償ボランティアの大学生が望ましいと思います。アメリカにはビックブラザー、ビックシスターと呼ぶ困窮世帯の子どもに対し、年長の青年と1対1のつながりをつける制度があり、大きな成果があると聞いています。年の近い年長者とつながりを持ち、大学生というモデルを見ることにより、「自分も大学生になりたい」などの将来への展望が開くはずです。

 場所の選定にも注意を置き、例えば電車賃が払えない子どもにはどのように対応するかなど、きめ細かい配慮が必要です。

 この事業は、貧困の連鎖を断ち切るためのこれからの日本にとってもまた少子化対策としても重要な事業です。市長の強いリーダーシップのもと、早急に取り組むよう強く要望します。

 将来的には、「子どもの貧困・社会排除問題対策本部」を設置した縦割りの行政を横につなげていく荒川区のような取り組みも検討の視野に入れていくべきと考えます。