対話による美術鑑賞事業について(3月一般質問より)

2016年3月21日 18時26分 | カテゴリー: 活動報告

一般質問の原稿と答弁内容です。

対話による美術鑑賞事業について                          

1 大和市文化発信の目玉として

美術作品は一人で黙って観るというのが従来の鑑賞方法です。人はしばし作品の前に立ち、作品とのみ会話し、立ち去っていきます。
それに対し、作品の前で数人が語り合い、対話によって導かれながら作品を鑑賞するのが「対話型美術鑑賞」の方法です。    小学生に対してこの事業を行っている本市のリーフレットによると、「グループで美術作品を見て、対話しながら作品の見方を深めていく鑑賞方法のことをいいます。一人ひとりが感じたことや考えたことを自由に発言し、互いの話を聞くことで新たな発見が生まれます。知識に頼らず、よくみて自分の考えを言葉にするなかで、子どもたちは主体的にものをとらえ、答えのない問題を考え続ける面白さを学んでいきます。」とあります。
平成24年度に始まった「対話による美術鑑賞事業」は、美術館がない行政市の取り組みとしては、日本国内はもとより、世界においても類がない先駆的な試みです。文化を大切にするイメージは、人々に良い印象を与え、宣伝効果もあります。大和市の貴重な文化的取り組みとしてもっとアピールすべきですし、衰退することのないよう積極的に取り組む必要があると考えます。
また、「市民が文化芸術に親しむことのできる環境をつくる」「次代を担う子どもの豊かな人間性を育み、子どもが文化芸術に親しむための施策を推進する」と謳っている「大和市文化芸術振興基本条例」を実行するにあたり、この事業は、有効な手段の一つとなり、市民の文化に対するイメージ向上にも大きく寄与するものであると考えます。本市は、他市に向けても事業を推奨すべく、社会にもっとアピールすべきです。そこで質問します。

・この事業は、大和市文化芸術基本計画を充実させるために実のある事業であると考えます。先駆的な取り組みであるこの事業について市長のお考えをお聞きします。

市長答弁

事業が始まって4年がたった。この事業は、観察力やコミュニケーション力を育むもので、近年、美術館でも取り組み始めているところがある。本市のように美術館がない市が取り組んでいるのは、先駆的であり、他市からも評価されている。子どもにも好評で文化芸術を感じるために、大変有益である。事業の更なる発展に向け取り組んでいく。

2、事業の意義・効果

現在、本市の小学校で行っている対話による美術鑑賞は、アクティブラーニングといわれる体験型の授業です。その手法であるVTS(Visual Thinking Strategies 直訳すれば、視覚によって思考する計略)は、「観察、解釈、根拠を持った考察、意見の再検討、そして複数の可能性を追求する力=複合的能力」を身につける効果があるとされ、あらゆる学びの基礎となる力を養いうるといわれています。言語力、創造力、考える力、コミュニケーション能力などを育む効果があることは国際的に定評となっています。
「大学に入ってからも学びのモチベーションが持続するような教育」を標榜する多くの中高一貫校が、生徒の創造性やコミュニティ能力をのばすための双方向性型、参加型、ワークショップ型の授業を取り入れ始めています。また、大学でも対話を重視した学習方法に注目しており、ある国立大学では教養課程においてワークショップ企画プロデューサーを教員として採用するなど、対話型の授業は、まさにこれからの時代の学習方法であると言われています。
なぜでしょうか。それは、参加型授業が自分で考える、みんなで一緒に考えるというプロセスを経ることによって深い理解と発見を促し、またそれを言葉にすることによって言語能力やコミュニケーション能力を向上させることが期待されるからです。
VTSを開発したニューヨーク近代美術館の元教育部長、フィリップ・ヤノウィン氏は次のように述べています。
「子どもたちは自分で考えるプロセスを経験することで、知識は自ら獲得していくものであることを学ぶ。自分で考えることを学べば、仲間に頼ってもよいということに気づき、異なる意見から刺激を受けて、別の見方を取り入れることができるようになる。そして、反対意見は脅威ではなく、興味深く価値あるものに変化し、多くの問題には複数の解決策があることが見えてくるのだ。」
この言葉を読んだとき、私はプラトンの哲学が対話で構成されていることを思い出しました。対話は、古代から思索の一つの方法であったということです。
また、次のようにも述べています。
「実践を重ねることで好奇心も高まり、もっと知りたいと思うようになる。これはまさに人生経験そのものであり、専門家たちの研究プロセスとも本質的に同じである。」
これこそが「学習」ではないでしょうか。学習に積極的になる近道は、それを面白いと思うようになることです。そうなれば、学力向上はたやすいことです。

そこで質問します。

・この事業は、児童、生徒の創造性やコミュニケーション能力をのばし、学級内を活発化させるために有効であると思われますが、教育長はどのようにお考えですか。

教育長答弁

 教育において感じたことを言葉にし、他者と共有することは大事なことである。自分の考えをまとめ、相手の考えにも耳を傾けながら作品を見ることは、考える力を身につけるアクティブラーニングである。教育委員会としても学校と協力し、工夫しながら実施していく。

3、事業に対する学校の評価

対話型美術鑑賞は、すべての子どものために役立つ授業です。
市内小学校において授業を見学した際、ボランティアであるシャベラ―さんたちは、すべての子どもに発言を促し、すべての子どもが自分の言葉で語っていました。授業後の振り返りの時間では、普段あまりしゃべらない子や集中力にかける子もしっかり参加できていたことを先生は喜んでおられました。また、この授業の間は、先生は客観的に子どもたちを観察できるため、子どもへの理解につながる、という意見も出ています。
この授業には「正解」がありません。自由に発言してよいのですから、「間違い」がないのです。決して否定されないことにより、子どもたちは安心して自分の意見を言うことができます。シャベラ―さんは、子どもの言葉を受け入れ、自分の言葉に言い換えることによって「自分はあなたの言っていることを理解している」という事実を示します。子どもは理解される喜びを得、平等に扱ってもらえると感じるはずです。そこには対等な学びの場が生まれ、子どもたちは発言することを恐れなくなります。この授業のあとしばらくは、通常の授業においても子どもたちの発言が活発になることを、多くの教師が体験しているとのことです。
私は、授業の中で、子どもたちの言葉によって自分自身が開かれていくのを感じました。子どもたちが自分の目で見、発見し、語るのをまじかで見ることができるシャベラ―さんや先生をうらやましく感じたほどです。
子どもたちは、学校内で一緒にいる機会が多くても友達の意見を聞く機会は案外少ないものです。通常の授業や学級会では、発言力のある子どもしか手をあげないという状況は今も昔も変わりません。この授業では、多くの仲間が発言するのを聞き、この子はこんなことが言えるのかと友達を見直す良い機会になると思います。
質問します。

・この事業に対する学校の評価はどのようなものか。子どもたちや教師へのアンケートでは、どのような感想や意見が上がっているでしょうか。

教育部長答弁

 学習指導要領には、図工の授業において鑑賞の分野があり、友人と話し合いながら作品を感じることが示されている。対話型美術鑑賞事業はこの目的を達成するのに効果的である。教員や児童へのアンケートでは、主体的に学ぶ活動として好評。しかし、授業の中に活動を組み入れる時間の調整の苦労もあると聞いている。

4、ボランティア活動の意義

本事業におけるボランティアの方たちは、「子供が好き」「美術が好き」などの理由から参加しており、自分自身の生活や仕事への意識向上のためにも役立つ、話の合う友達ができると、喜んでいる方が多いと聞いています。研修会を見学させていただきましたが、皆さん、とても熱心に、情熱を持って参加されている様子が印象的でした。
超高齢社会に突入した本市においてもこれからの世の中は様々なボランティアの活躍に期待することが多くなります。本事業のボランティアは、文化的意識の高い方たちの活躍の場として大いに期待できるものですし、事業を拡大することにより、より多くのボランティアが生きがいを持って参加できることが期待されます。
そこで質問します。

①事業のボランティアについて、募集人数と採用人数は何人でしょうか

②採用者の内、辞めた人の割合をお答えください。ボランティア開始後1年目と2年目以降とでは違いはあるでしょうか。

③事業に対するボランティアの方々の感想はどのようなものがありますか。

④市民ボランティア活動としてこの事業の意義をどう考えるかお答えください。

 

文化スポーツ部長答弁

現在のボランティアは41名。
募集人数  採用者数
平成24年度    30     13
平成25年度    15     14
平成26年度    15     13
平成27年度    16     10
初年度は仕事や家庭の事情でやめる人がいるが、2年目からは止める人は0人 定着率82%
ボランティアの感想はよい。
自らの能力を子どもたちのために発揮でき、自身も成長できるので意義があると考える。

 

5、美術館訪問について

現在、大和市では対話型美術鑑賞事業を全小学校において行っています。学校内での授業は全小学校で実施していますが、美術館への訪問授業は一部の学校に限られていると聞いています。
先日、学校内での授業の様子を見学させてもらいましたが、その授業は、美術館訪問前のものでした。参加していた私も授業を通して「本物を見てみたい」と強く思いましたし、子どもたちにもそれは感じられました。
格差社会の現在、家庭内において美術館等に連れていってもらえる子どもは限られています。学校の授業において本物の作品に触れうる体験は非常に貴重なものです。学校内で見たカードやスライドとは異なる本物のインパクト。それは、子どもに強い印象を残すに違いありません。「大きさにびっくりした」「絵の具が厚く盛られていた」などの子どもたちの感想が上がっていると聞いていますが、これらは印刷物や映像では味わえないものです。
本市で新たにできるYAMATO文化森内のギャラリーを一定期間借り上げ、本物の作品を展示し、美術館に行くことの困難な学校の子どもたちに美術作品を見せる。そしてその場で対話による美術鑑賞の授業を行う。これができれば、今まで学校内の授業だけに甘んじていた子どもたちもアート作品に触れることのできる可能性が高まるのではないでしょうか。
美術館に行くことは意義深いものです。しかし、一般の鑑賞者の妨げになることもあり、多くの美術館は受け入れが難しいと聞いています。また、人数が多すぎて対応しきれなかった学校も移動の簡単な大和市内のギャラリーならば、全学年ではなくクラス単位で鑑賞が可能になるはずです。そこで質問します。

1、現在の対話型鑑賞事業を行っている全小学校19校のうち、美術館で授業を行うことができている学校は何校か。また、   美術館に行けない理由は何か。美術館側と学校側 双方に問題があればそれもお答えください。
2、学校で対話型鑑賞の授業を行い、子どもたちが実際に美術作品を鑑賞できない今の事態について、教育委員会はどう考えているのでしょうか。
3、人数が多すぎて対応しきれなかった学校も移動の簡単な大和市内のギャラリーならば、全学年ではなくクラス単位で鑑賞が可能であり、より多くの学校が美術作品を鑑賞できる利点があると考えるがいかがお考えでしょうか

教育部長答弁

美術館との日程調整や規模により、訪問可能美術館は限られており、平成26年、27年とも美術館に訪問している学校は7校。(渋谷、緑野、福田、大野原、下福田、中央林間、引地台←学校名は言わない)
教育委員会としても文化ギャラリー活用についてはこれから研究していく。

 

答弁後の提案

私は、対話による美術鑑賞事業は、一般市民にとっても有益なものと考えています。
ひとが美術館で一つの作品に費やす時間は思いのほか少ないものです。むしろ解説を読む時間の方が長いくらいです。作品にじっくり向き合い、人の発言によって作品内にあるものに気づき、自分だけでは見えなかったものが見えてくるという体験。これは大人にとっても興味深く、意義のあることではないでしょうか。また、作品の前で語り合うことにより、友人同士との会話が弾み、楽しみながら作品を鑑賞することができれば、文化を味わいつつ、親睦もまた深まることでしょう。
VTSは、視覚と知性の結びつきといった広範な能力をも育成し、多くの認知プロセスを活性化させるといわれています。質問に答えようとすることで、脳の知覚を生成する部分と言語中枢とをつなぐ神経経路が恒常的に活性化されるといいます。   ニッセイ基礎研究所 吉本光宏「アートが拓く超高齢社会の可能性」というレポートの中に、NPO法人アーツライブの林さんの話が載っています。
「人間の脳にはメモリーとイマジネーションの機能があり、アルツハイマーでは記憶機能が退化するため、創造力の方が強くなり、いわばアーティストに近い状態になってくる。機能している脳を刺激すると、アルツハイマーの進行を遅らせたり、場合によっては直したりできる可能性があり、そういう意味でも想像力を刺激するアートの鑑賞プログラムは有効」だというのです。
港区では、2015年から認知症カフェで対話型鑑賞事業を行っているそうです。

文化森内のギャラリーの活用について、ご答弁では、これから研究していくとのことでした。また、本定例会の文教市民経済常任委員会において小倉委員の同様の計画の質問に対し、指導室長は「使用可能かどうかも含めて前向きに検討していきたい」と答えておられます。ぜひ、この鑑賞方法が子どもや市民に有益であるということをよく研究していただき、実現に向けて歩み始めていただきたいと思います。
なにもレンブラントやゴッホを飾れというのではありません。例えば若い日本の現代作家の作品を展示すれば、アーティストへの応援にもなりますし、企画を広げれば、作家本人との交流も可能です。そんなイベントがあれば、他市からも人を呼べる事業になるはずです。
先日、「目の見えない人による絵画鑑賞」というものがあることを知りました。視覚障がい者がナビゲーターになって、数人の見える人がその人にわかるように絵を説明していく。見えない人は、疑問を投げかけ、他の人たちの対話を誘導していく。そのことにより、そこにいる全ての人の絵画に対する理解が深まる。というものです。まさしく、対話型美術鑑賞そのものであり、その応用です。ギャラリーを開放することにより、こんなこともできるようになるのです。
また、一般市民や高齢者に対話型鑑賞事業を行うことにより、ボランティアの活躍の場も広がり、多くの市民がこの事業の意義を実感できる場となりえます。
ギャラリー内でのアート作品の展示は、対話による美術鑑賞以外の時間にもまた有用です。一定期間ではあっても、遠くの美術館に足を運ぶことの困難な人々、また美術館内で声を出すことが可能になることによって、小さな子供連れの市民、障がいのある方たちなどいわゆる社会的弱者にとっても居心地のよい美術鑑賞の場になるのではないでしょうか。