文化について(2016年12月一般質問より)

2016年12月21日 11時15分 | カテゴリー: 活動報告

昨今、各地で「中立性」の名のもとに、公共施設での展示や講演等に政治家が介入し、思想、言論の自由を制限する動きがあることに、私は非常に危機感を持っています。「表現の自由」尊重を主張するため、下記のような一般質問を行いました。

 

11月3日、待望の文化創造拠点「シリウス」がオープンしました。芸術文化ホール、図書館、室内子ども広場、学習センターなど複数の機能が融合した公共施設は、予想を上回る盛況ぶりです。
面積を大きくし、蔵書量を大幅に拡大した図書館をはじめ、音響設備の整った大ホールなど、大和市の今後の文化を担う施設として、市民に期待されています。
シリウスの開館に当たって、市長は「大和市に欠けていた文化を誘致しようと考えた」「この施設を市民に使っていただき、可愛がっていただきたい、次の世代につなげてほしい」と述べられました。文化芸術を尊重し、市民が文化活動を享受、創造するために資するのは、自治体の施設の役目です。
大和市文化芸術振興条例 第2条には、下記のような条項があります。
「文化芸術の振興に当たっては、文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ、市民が文化芸術に親しむことのできる環境をつくるものとする。」
「文化芸術の振興に当たっては、市民の自主性及び創造性ならびに文化芸術の多様性を尊重するものとする。」

質問

シリウスもこの条例に基づき、今後運営を行い、発展していくものと思われます。
開館に当たって、文化芸術の多様性について市長のお考えをお聞かせください。

答弁(市長)

本市の文化芸術振興条例では、文化芸術の振興にあたり基本的な考え方の一つとして文化芸術の多様性を尊重することを掲げております。
この文化芸術には、音楽、演劇、舞踊などの舞台芸術や日本固有の伝統文化だけに留まらず、漫画、アニメといったポップカルチャーや先進的、革新的な現代芸術など様々なジャンルが含まれるものと考えております。
本市といたしましては、条例の趣旨に則ってこれらの多様な文化芸術活動がシリウスにおいて活発に展開されるよう引き続き支援してまいります。

答弁後の主張

芸術文化の表出には様々な側面があります。それはすべて、人間が作り出すものですから、そこには作者の思想、意思、意見が表れます。
横須賀市が運営している横須賀美術館では今、「新宮晋(しんぐうすすむ)の宇宙船」と題する展覧会を開催しています。新宮晋氏は、風や水の流れなどを受けてユニークな動きを見せる屋外彫刻で広く知られるアーティストで、見る者に自然のエネルギーを改めて感じさせる作品は、国内のみならず世界各地に設置され、その土地の風景と一体となって親しまれています。
現代美術は時代に即した表現方法です。新宮氏はこの展示表現についての思いを「これ以上、地球の自然環境を破壊することがあってはならない」「われわれが文明社会と思っている今の生き方は幸せなのか。このまま突き進んだらまずいと思う。だが誰もブレーキをかけない現状がある」と危機感あふれる言葉で語っています。これらの思いを直接鑑賞者の心に届けることができるのがアートの力です。

また、現在、横浜市中区のBankART Studio NYKにおいては「柳幸典 ワンダリング・ポジション」が開催されています。柳幸典氏は、国家や戦争、原発に関する政治的なメッセージを変幻自在な作品を通して発信してきた現代美術家です。 代表作といっていい「アント・ファーム」シリーズは、テート・ギャラリーやサンフランシスコ近代美術館など世界の美術館の他、福岡市立美術館、広島市現代美術館、高松市立美術館など多くの美術館に所蔵されています。その作品は、透明なプラスチックの箱の中に着色した砂で各国の国旗や紙幣を型取り、そこに蟻を入れて砂を掘らせ道ができた跡を見せるというものです。「ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム」という作品では、制作当時の国連加盟国170国の旗をチューブでつなぎ、蟻に縦横無尽に穴を掘らせています。どう感じるかは各自の自由ですが、人間がこだわる国や国境も蟻には何の意味もないことを読み取る人もいるでしょう。

このように、芸術作品には現代を写すメッセージが込められているものが多くあります。というより、何かしらのメッセージや人間存在の表出がないと芸術とは言いにくい。柳氏は自分の表現に関する対談の中で「いずれ破滅をもたらすことに繋がる制度疲労なりおかしいところを突いていくのが芸術の特性でもあるはず」と述べています。

絵画や展示作品だけでなく、音楽や舞台芸術においてもその特性は表れます。例えば、現在、モーツアルトの「フィガロの結婚」というオペラを政治的作品とみる人はいないでしょうが、当時は貴族社会を揶揄する風刺作品としての性格も持っていました。現在でも演出によっては作品の印象はがらりと変わり得ます。

昨今、各地で「中立性」の名のもとに、公共施設での展示や講演等に政治家が介入し、思想、言論の自由を制限する動きがあることに、私は非常に危機感を持っています。6月の議会において採択された「大和市の後援名義に関する要領の適正な運用を求める決議」に神奈川ネットは反対しました。現在、大和市は要領を適正に運用しています。今でも必要な決議であったのかとの疑問を禁じ得ません。決議は「少しでもあやしいものは後援するな」という排除の主張となり、思想の制限につながるのではないでしょうか。

本年7月31日、神奈川新聞に横浜市戸塚区「教科書パネル展」についての記事が載りました。戸塚区図書館前ロビーで6月中旬に行われた「よくわかる教科書パネル展」を巡り横浜市議が「特定の教科書への批判だ」と指摘し、市が対応を検討しているという記事でした。この市議は新聞社の取材に対し「言いたいのは、展示内容のことではない」と再三、念押しした上で、
「地区センターという公の場所を、政治を論ずる場所にしていいのか」
「市が特定の政治的主張に対し、便宜供与しているという誤解を一般市民に与えかねない」
「市庁舎の中でやってはいけないことがあるはずだ」と述べています。
それに対し、教科書を展示した世話人の一人は、
「展示内容をどう評価するのかは、訪れた人が判断すること。それが民主主義社会における「表現の自由」の意味だと思う。」
「いま最も恐れるべきことは、自由な表現が委縮によって隠れ、あるいは圧力によって隠され、大事なことが公にならないこと。それでは健全な民主主義は機能しない。」と述べています。
どちらの意見に納得するかは、人によって違うでしょうが、展示することを問題にする、そこは、私も問題だと思います。

文化森という名前を持つ施設内にあるシリウスを今後、発展させ、文化をさらに振興していくためには、多様な文化芸術を受け入れ、市民に提供していくことが大切です。
公共施設での展示や講演、あるいは文化的芸術的公演は、市民の文化や福祉の向上のためにあります。公序良俗に反しないよう、条例や要綱も存在します。その中での自由は最大限尊重すべきです。憲法19条は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」とあります。それに悖るようなことはあってはなりません。

表現作品を前にして、市民が様々な考えを享受できる。そんな文化振興を求めていっていただきたいと思います。