化学物質過敏症について(9月一般質問より)

2017年10月12日 16時37分 | カテゴリー: 活動報告

現在、私たちの生活のあらゆるところで化学物質が使われています。古くは石鹸やアルコールといったものも人間が作り出した化学物質です。これらは、私たちの生活を清潔に維持するために、今やなくてはならないものと認識されています。科学の粋を集めた薬の開発も手伝って、細菌によって引き起こされる恐ろしい病気で死亡する人も日本では極めて少なくなりました。
不快な害虫を寄せつけず、刺されてしまっても速やかにかゆみを抑えることができます。
暑い時期、汗をかく季節になると、汗を抑え、においを防ぐ製品が所狭しと薬局やスーパーマーケットの商品棚に置かれます。不潔で不快なものを排除し、快適な生活環境を維持するために、化学物質を使用した製品は私たちの身の回りを取り囲んでいます。漂白剤、殺虫剤、殺菌剤、抗菌剤などを何も使っていないという現代人は、ほとんどいないと言っていいでしょう。

日本人は、体臭がきつくない人が多いこともあり、お香といった文化を除いて西洋のように香水が発達することはありませんでしたが、最近は衣服に香りをまとう方が増えてきました。テレビを見れば、日に何度もにおいを香りで防ぐ、柔軟剤の宣伝が目に留まります。その影響もあってか、香りをまとうことは、素敵でよいことであるという意識を持つ人が増え、柔軟剤の使用人口は増大しています。
それに伴い「香りの害」と書く「香害」という言葉も生まれています。使用している本人にとってはいい匂いであっても、他人には迷惑なものとなる。匂いの指摘はデリケートな問題ということもあり、迷惑と感じていても本人には言いにくいものです。

今年8月23日の毎日新聞「人生相談」に次のような相談が乗りました。

「他人の衣類のにおいに悩まされています。上司の50代男性が隣の席で柔軟剤の「フロ-ラルの香り」を振りまいています。毎日8時間は一緒の部屋にいるため、においをかいでいるうちに頭が痛くなってきます。同僚も同様に感じています。まさに「スメルハラスメント」ですが、本人は加齢臭を人工的な香りで押さえつけているつもりのようです。失礼でない方法で「くさいです」と伝えたいのですが…」
この相談の回答は、「迷惑ではない香りの柔軟剤をプレゼントしてみたら」というものでした。しかし、この回答は正しいのかどうか疑問です。頭が痛くなるということは、その香りの問題だけではなく、柔軟剤による人工的な香りとともに発散される化学物質が相談者を悩ませている可能性が高いと思われます。

東(あずま)賢一・近畿大学准教授と内山巌雄・京都大学名誉教授は、化学物質過敏症の患者や発症の可能性が高い高感受性集団に関する全国規模の調査を2012年に行っています。内山教授は2000年にも調査を行っています。
2000年と2012年の調査結果を比較すると、化学物質過敏症と診断を受けた患者は、2000年0.81%、2012年1.02%。症状はあるが診断は受けていない潜在的患者は2000年0.74%、2012年4.4%。何項目かのみ症状がある化学物質過敏症の可能性が高い人は2.1%から7.7%に増えています。2012年の症状のある人の合計は13.12%で2000年の3.65%から10%近く増えていることになります。

何らかの対策を施さないと、今後化学物質過敏症の患者は増え続けると予想されます。

対策を施すためには、化学物質過敏症がどのような病気なのか知る必要があります。「化学物質過敏症」とは、わずかな化学物質でも取り込むと全身に様々な症状が出る病気で、2009年に病名として登録されています。化学物質を一度に大量に取り入れたり、長期間取り込み続けることによって発症するとされていますが、その許容量は人によって違います。いったん過敏症になってしまうと、その後は次第に様々な物質に少量でも反応するようになります。めまいや鼻血、耳鳴り、吐き気、咳、ジンマシン、頭痛、かゆみなど症状は様々です。タバコや柔軟剤、塩素系漂白剤やシンナーといった誰でもにおいがきついと思うものだけでなく、コピー用紙のインクや薬の成分、脱酸素剤や乾燥剤といったものに反応する人もいます。水道水のカルキにも反応する方は、浄水しなくては水道水にさえ、触れないということになります。体が化学物質の飽和状態にあるということなので、体にたまった化学物質が含まれる自分の汗で苦しくなることもあるということです。

文春新書の「化学物質過敏症」という本があります。著者は、柳沢幸雄、石川哲、宮田幹夫のお三方で、環境汚染の研究者や臨床環境医学の医師の方たちです。2002年出版の本です。この中に新築の家でシックハウスになった高校生の手記が載っています。高校生といっても、あらゆる物質に反応する身体になっているため、また学校側の無理解もあり、登校はできていません。「化学物質人間」と題された手記は、次のようなものです。

「私は、化学物質過敏症になってから、蚊に喰われたことはありません。蚊が血を吸おうとしないのです。蚊どころか虫一匹寄って来ません。私の血が危ないということを、きっと本能でわかるのでしょう。たまに私に留まる虫がいるのですが、止まった虫は動きが鈍り、そして死んで地面に落ちるのです。虫を殺すほどの化学物質を私の身体は常に出し続けているのでしょう。虫を殺すほどの量の化学物質が私の身体には溜まっているのです。私の身体に虫がとまって死ぬということは、とても恐ろしいことですが、事実です。こんな化学物質人間がいったいどのくらいいるのでしょうか。今は私一人としても、じわじわと知らない間に人間の身体に化学物質がしみこんでいき、その結果どのくらいの人間が将来、私と同じ化学物質人間になるのでしょうか。」

記録をつけているのでわかるのですが、私がこの本を読んだのは2004年です。とても印象的な逸話なのでその後、いろんな人に話しましたが、ほとんどの人からは「うそでしょ」とか「まゆつばだ」という反応しか返って来ませんでした。この病気は、症状の苦しみに加えて、まわりに理解してもらえないつらさもあります。反応をなるべく少なくするために、生活の全てを変え、時には引っ越しも必要になります。学校や会社に行けなくなる方もおられます。衣食住すべてに関係しますから患者本人だけでなく、その家族も大変不自由な生活を余儀なくされます。

化学物質が氾濫する現代社会の人々にとって、これはひとごとではありません。許容量を超えれば、誰でも発症する危険があります。このことを広く市民に知らせる必要があると考えます。昨年、6月の山田議員の質問で、本市は「化学物質過敏症の存在と被害防止を広く周知することが必要と考えております」と答弁をし、注意喚起のポスターを作りました。本庁舎の1階に貼ってあるのを私も見ましたが、保健福祉センターなど他の公共施設では見たことがありません。

健康都市を標榜する本市が、これから増え続けるであろう化学物質過敏症について注意喚起を行う姿勢を強く示すことは大切と考えます。2009年の神奈川ネット平山議員の電磁波についての質問で、市長が歯科医としての経験から電磁波についてのお話をされた時、ネット上の電磁波に関心のある方たちの間でちょっとした話題になったということです。自治体が一つの姿勢を示す影響力は高いものと思います。

そこで質問します。

①「化学物質過敏症」に対する本市の姿勢を改めてお聞かせください。

「化学物質過敏症」のポスターは現在、どこに何枚貼ってあるのでしょうか。

② 保健福祉センターをはじめ、学習センター等、市の公共施設、掲示板等、なるべく多くの場所に掲示するべきと考えますがいかがでしょうか。

次に、これからの自治体の対応に重要である市職員への周知についてです。

先ほど、香りの害「香害」について申し上げましたが、テレビCMの影響もあり、香りや抗菌剤を提供することがサービスであるという認識が高まっているのが今の社会です。
香料を拡散機で流す「香りの空間演出」は、ホテルやアパレルショップなどで始まり、駅やバス、タクシー、図書館などに広まっています。
自治体では、昨年の夏に神奈川県厚木市と埼玉県越谷市が、市庁舎や図書館にアロマディフューザーを設置しました。市民サービスの一環と考えたのでしょう。しかし、両市とも市民アンケートなどの結果、8月末には使用を中止したとのことです。香りで心地良いと感じる人はいると思います。しかし、それによって被害を受ける人もいます。化学物質過敏症の人は、そのサービスによって市役所に近づけません。これは問題です。先ほど申し上げた調査結果によれば、患者を含め化学物質に敏感な方は2012年時点で13パーセントです。5年後の今ではもっと多いと考えられます。

市職員が、化学物質過敏症について知り、知識を生かせば、この過剰なサービスを避けることは可能です。また、窓口対応をする職員などは、ご自分の香りにも注意をする必要があると思います。香りの好みの問題だけではありません。もしかしたら窓口に来た市民に害を与えているかもしれないからです。

質問します。

③ 市民サービスを行う自治体として「化学物質過敏症」について市職員に周知する機会を設けるべきと考えますがいかがでしょうか。

  市民経済部長答弁

 1点目、周知についての1つ目、市の姿勢とポスターの掲示先についてお答えいたします。
化学物質過敏症は、殺虫剤や芳香剤など身近なものが原因であるために、周りの人に理解されにくい面があることから、その存在を含めて周知していくことが必要であると考えております。現在、化学物質過敏症に対する理解を呼びかけるポスターを、昨年度に引き続き市庁舎の1階と2階の掲示板に1枚ずつ掲示し、周知をしているところでございます。
2つ目、公共施設などへのポスター掲示についてと、3つ目、市職員への周知については、関連がありますので一括してお答えいたします。
ポスター掲示のほか、ホームページでも周知を行っているところでございますが、今後より多くの公共施設等に掲示して周知を図ってまいりたいと考えております。市職員に対しましても、毎月発行する職員向けの健康だよりを活用し普及に努めてまいります。

次に乳幼児に関する周知についてです。

清潔志向は、中高年の方より若い方たちにより多く見られる傾向です。昨年、子育て支援施設の仲間たちが乳幼児を育てている方たちにアンケートを行いましたが、その中では市の子育て施設に「清潔であること」を求める声が多く上がりました。抗菌剤の入ったウエットティッシュを多くの保護者は持ち歩いていることと思います。柔らかな衣服を着せたいがために柔軟剤を多量に使用し、赤ちゃんが衣服からフローラルの香りを振りまいていることも珍しくありません。様々な製品を使う自由を奪うことはできません。しかし、それが子どもに害を与えているかもしれないことを周知することは可能です。
2010年平山議員の一般質問における市長答弁では、
「市では、妊娠中や子育て中の家庭に対しまして、母子健康手帳交付時や各種講座、育児相談、乳幼児健診の機会をとらえまして、アルコールやたばこの害、食べ物や食器、衣類やおもちゃの選び方などにつきまして情報提供や化学物質に関する注意喚起を行っております。」とあります。これは現在、どのような状況でしょうか。

質問します。

④化学物質について、母子健康手帳交付時の注意喚起はどのように行っているのでしょうか。

⑤母子健康手帳交付時に化学物質が子どもに与える影響について知らせるべきと考えますがいかがでしょうか。

 こども部長答弁(担当:すくすく子育て課)

4つ目、化学物質について、母子健康手帳交付時の注意喚起はどのように行っているのかと、5つ目、母子健康手帳交付時に知らせるべきと考えるが、いかがかとの御質問につきましては、関連がございますので一括してお答えいたします。

 妊娠されている方や子育て中の御家庭に対しては、アルコールやたばこの害、食べ物、衣類を初めとする身の回りのものや生活に関連する化学物質について、母子健康手帳交付時に限らず、乳幼児健康診査、育児相談などの際に必要に応じて情報提供や注意喚起を行っております。今後につきましても、最新の情報を収集し、市民にとって必要かつ有益な内容を提供できるよう努めてまいります。

ご答弁、ありがとうございました。

本市では既に、化学物質過敏症について周知の必要性を認識し、わずかではありますがポスターの掲示も行っています。今後はさらに多くの場所にポスターを掲示してくださるとのことです。よろしくお願いいたします。公共施設や掲示板への周知も必要ですが、学校や保育園など子どもが関わる場所への掲示も今後、検討いただきますよう要望いたします。
市の全職員が化学物質過敏症について知ることにより、わが身を守り、市民への害の拡大を防ぐことに繋がります。職員自身の健康問題に関して申し上げると、この病気は化学物質を多く取り入れる可能性の高い職業の方ほど、罹患率が高まります。大和市で最も化学物質に多く接している職場は、おそらく市立病院です。釈迦に説法かもしれませんが、医師や看護師のみなさんの健康管理にご留意くださるよう、お願いいたします。

周知の必要性を認識している本市で、今後、アロマディフューザーを設置した厚木市のようなことは起こらないとは思いますが、私が気づいたもので一つだけ、なくてもいいのではないかと思うものがあります。

それは、シリウス内の図書館4階に設置されている「図書消毒機」です。この機械に本を入れると、風でほこりを吹き飛ばし、紫外線を当てて消毒します。その後、抗菌剤を吹き付ける、というものです。図書館流通センターが販売していていることもあり、今、全国の図書館に広まっています。シリウスの消毒機には「30秒で貴方の健康を守ってください」と表記があります。
書籍の保存という役割を持つ図書館の本に、紙に悪影響のある紫外線を当てるというのも疑問ですが、抗菌剤という化学物質を無理に本に付着させることが、健康につながるのか疑問です。
他人が触った本には何がついているかわからないから、消毒したいという気持ちはわからなくはありません。特に小さい子どもが触れる絵本などに使いたくなると思います。しかし、本を介して病気等がうつることは、まずありません。
毎日新聞2016年10月16日の記事がこれについて取り上げています。
記事には、「菌の繁殖に詳しい微生物化学研究所の五十嵐雅之研究部長は「一般生活で付着する細菌といえば大腸菌とブドウ球菌ぐらい。大腸菌は乾燥に弱く、ブドウ球菌は全ての人が潜在的に保有している。また、インフルエンザなどのウイルスは、紙に長期間付着すると活性化しなくなる。細菌もウイルスも過剰に心配する必要はない」と指摘している。 」と書かれています。

ですからその使用は、ほとんど気休めに過ぎないものと思いますが、図書消毒機は、多分、利用者に好評で、喜ばれています。今は、喜ばれる価値観の世の中です。しかし、抗菌剤のついた本に触るのを嫌がる方もおられます。化学物質過敏症の方は、その本を触ることができません。
今後、図書消毒機の使用継続について、考えていただきたいと思いますし、市民サービスのために消毒機を増やして、全ての返却本を消毒しよう、ということにならないよう注意していただきたいと思います。