妊娠相談の拡充について(2017年12月一般質問より)

2017年12月31日 18時07分 | カテゴリー: 活動報告

不妊治療は技術の進歩が目覚ましく、今や赤ちゃんの20人に1人が体外受精によって生まれています。
不妊に悩む人たちには福音である技術ですが、望んだ女性すべてが不妊治療によって妊娠できるわけではありません。
妊娠を望む女性への心のケアが不足している現実に目を向け、一般質問に取り上げました。

1、出生数の現状と不妊治療の増加について

女性の出産年齢は、年々上がり続けています。
出産の最適年齢は、医学的には20歳代といわれていますが、出産年齢の上昇により、日本の初産平均年齢は、平成25年に、はじめて30歳を超えました。厚労省の統計によると平成28年は、30.7歳となっています。

平成28年の第1子出産時の母親の年齢順位は、30歳代が一番多いことがわかります。統計を見ますと、
30~34歳一番多く、32.3%
25~29歳が31.8%
35~39歳が17%
20~24歳が12% の順番で、
30代の合計が 49.3%
20代の合計が 43.8%です。

第2子以下を含めた出産年齢割合を年度で比較しますと、
35歳以上の出産割合 平成12年 11.9%  平成23年 24.7%
40歳以上の出産割合 平成12年 1.3%   平成23年 3.6%
と年々、高齢化していることが分かります。

妊娠は、年齢が上がるほど、しにくいと言われています。
一般社団法人の日本生殖医学会によりますと、25~29歳では、不妊確率が8.9%であるのに対し、30~34歳では14.6%、35~39歳では21.9%、40~44歳では28.9%と、30歳以降の自然妊娠の確率はどんどん下がっていきます。

現在は、医療技術の進歩により自然妊娠をしないと、不妊治療を行う方も珍しくなくなりました。
事実、不妊治療実施数は、年々増加しています。

タイミング指導、子宮内カテーテル挿入などの人工授精を行う一般不妊治療を試みたのち、出産に至らなかった人で、さらに妊娠を望む人が特定不妊治療といわれる体外受精等の高度技術治療に進みます。

資料をご覧ください。

    年 体外受精出生児数(人) 総出生児数(人) 割合(%)
2004年(H16) 18,168 1,110,721 1.64
2005年(H17) 19,112 1,062,530 1.80
2006年(H18) 19,587 1,092,674 1.79
2007年(H19) 19,595 1,089,818 1.80
2008年(H20) 21,704 1,091,156 1.99
2009年(H21) 26,680 1,070,035 2.49
2010年(H22) 28,945 1,071,304 2.70

 

2011年(H23) 32,426 1,050,806 3.08
2012年(H24) 37,953 1,037,231 3.65
2013年(H25) 42,554 1,029,816 4.13
2014年(H26) 47,322 1,003,500 4.71

総出生児数に対する体外受精出生児数の割合は、2010年で37人に1人。2013年で24人に1人。2014年で21人に1人(注:体外受精出生児数は、新鮮胚(卵)を用いた治療数、凍結胚(卵)を用いた治療及び顕微授精 を用いた治療の合計であり、日本産科婦人科学会の集計による。総出生児数は、人口動態統計による。)

・体外受精実施数に対する出生児数の割合

体外受精出生児数(人) 体外受精実施数(人) 割合(%)
2010年(H22) 28,945 242,161 11.9
2013年(H25) 42,554 368,764 11.5
2014年(H26) 47,322 393,745 12.0

体外受精による出生児数の推移です。2004年では1.64%であった総出生児数に対する割合は、2014年には4.71%と、生まれる子どもの約21人に1人となっています。

体外受精実施数が増加しているため、体外受精出生児数も増加しています。しかし、治療が成功し出産にいたる割合の変化は、それほど増加せず、11%から12%に留まっています。

 

2、不妊治療に関する相談について

平成28年の神奈川県の出生数は、72,795人です。うち、体外受精で生まれた子どもの推定は、平成26年時の割合、4.71の計算で3428人。体外受精を試みた人数はのべ31,169人。出産に至らなかった人のべ27,741人。これだけの人が望んでも妊娠できなかった計算になります。

本市に目を転じてみますと、ここ3年ほどの本市の出生数は、約2000人です。平成26年の割合4.71%から計算すると、1年に94人が体外受精によって生まれていることになります。
年に数回行っている人もいるかもしれないので、一概には言えませんが、本市の体外受精による出生数にあてはめると、のべ855人の女性が体外受精を試み、出産に至らなかった人がのべ761人いる計算になります。

今年7月24日 毎日新聞「人生相談」にこのような相談が乗っています。
「毎日が楽しく仲の良い夫婦です。ただ子どもができず不妊治療で意見の違いが出ています。夫は結婚前から子どもが欲しく、子ども=幸せという考えです。私は授かりもので、人の手を加えてまでは欲しくないし、不妊治療で精神がおかしくなりそうです。大好きな夫を父親にしてあげたいですが、心と体が拒否します。もうつらい不妊治療をやめて、二人で穏やかに暮らしたい。離婚しかないのでしょうか。」というものです。

不妊治療を続けるには、経済的にも精神的にも大きな負担があります。経済的負担の補助として、国や自治体では治療の助成制度があります。本市は、県内で唯一、一般不妊、特定不妊、不育症の3つの治療費用を助成しています。それは経済的に助けになっているはずです。
相談のような夫婦の場合、このような悩みの相談先にはどのようなものがあるでしょうか。夫婦で話し合うのが基本ですが、相談のように意見が食い違う場合もあります。孫を望んで治療に希望を託している双方の親にも言いにくいものです。何でも話せる友人がいるとしてもその友人に子どもがいた場合は、自分の辛さがわかってもらえないと思ってしまいます。不妊に悩む人、特に体力的につらい立場に追い込まれる女性は、友達からの子どもの写真がついた年賀状を見ただけでつらいという感じる人も多いと聞きます。相談できる相手が少ない中で、客観的に相談できる場が現在は、少なすぎると感じています。

神奈川県は、「不妊・不育専門相談センター」を設置しています。
「不妊治療を受けようか迷っている」「検査や治療方法について知りたい」「男性不妊について知りたい」「治療が続き心身ともに疲れた」など不妊に関する相談を受け付けています。また繰り返す流産や死産など不育症について、専門の医師、助産師、臨床心理士が相談を受けています。

神奈川県の相談所は、平塚保健福祉事務所にあり、月2~3回の電話相談と月1~2回の予約面接相談を行っています。平成28年の電話及び面接の件数は、91件です。大和市立病院の先生も相談対応に携わっていると、聞き及んでいます。
政令市にはそれとは別に相談所があります。相模原市の相談実績は、平成28年度 電話15件 面談20件とのことです。

また、不妊に悩んだ体験者の会など、全国には相談できる場があり、体外受精を行っている医院では、心理士に相談できる体制が整っているところもあります。体験者の会や、病院内で思いが吐き出せる人はいますが、医師の助言は時に人を傷つけることもあります。例えば、医師から治療を休んだらと言われたら、見捨てられたと思ってしまうなどの事例です。

仕事をしていたり、引きこもりがちになっていたりすると体験者の会を探して足を運ぶのはなかなかハードルが高いものです。県の相談所は、平塚にあるため大和市からは遠く、また、一般市民は県に相談するという気持ちはなかなかわかないものです。
おそらく、不妊治療を長期間、続けているほとんど全ての人は、精神的に悩んでいます。県の相談件数は、少なすぎると言わざるを得ません。

かつて子どもは「授かりもの」でした。ほとんどの大人が結婚していた時代では、妊娠しないと「石女(うまずめ)」などと呼ばれ、つらい思いをしていた女性はたくさんいました。不妊治療の技術ができ一般に向けた治療が始まったことにより、望んで子どもができる人が増えたことは朗報かもしれません。しかし、不妊治療が始まったことにより、人の気持ちはどう変わったでしょうか。

わたしは、「あきらめることができなくなった」のだと思います。

今ある技術を使わないでいることは困難です。現在のように不妊治療が珍しいものではなくなると、子どもを望んでも妊娠しない場合、不妊治療を始めるのはごく普通のこととなりつつあります。

2013年5月8日放送のNHKの番組、「クローズアップ現代」では、「終わりのない不妊治療」と題し、不妊治療をしている方たちの悩みについて報告を行っています。

経済的なことでは、費用をかければかけるほど、やめにくくなる現実が紹介されています。
アナウンス)1回あたりの費用は、総額で30万から50万
44歳女性夫婦)「費用面で無理な状態になるまでできるかぎりは、始めた以上頑張るしかない」「今やめたら全部むだになるのかなとか。自分で産む子どもっていうのは、1,000万かかったって、2,000万かかったって惜しくない」

心身への負担について。
40歳代女性「だんだん回数を重ねるたびに苦痛でしかない。悪い方に悪い方に全部考えていく」
アナウンス)ささいなことで夫と口論が増え、夫婦の関係もぎくしゃくするようになったといいます。人の子どもを見るのもつらくなり、家に引きこもりがちになりました。不妊治療のことを考えるだけで、ジンマシンが出ることもあります。
40歳代女性)「精神的にも全身全霊つぎ込んでやるので(治療の成果が出ないと)全部ひっくり返されてしまうので、本当にショックですよね。深い穴に落ちている感じです。」「やめてしまったら、可能性が完全にゼロになるので、何を機会にやめたらいいのかと思って。やめどきが本当にわからない。」
アナウンス)35歳以上で不妊治療を続けている1,400人のうち、半数近くが、不妊治療をいつやめたらいいかわからないと答えました。

一方、医療機関の8割以上が、妊娠する可能性が極めて低いとわかっていても患者が希望するかぎり治療を続けると答えました。現実的には、45歳の妊娠する確率 約1%ほどということです。
医師)「我々が一方的に可能性が低いとか、治療するメリットがないと言っても、受け入れることができない患者さんが多いと思うんですね。もし仮に言い切ったとしたら、患者さんは行き場を失って、場合によっては、多くの方は治療してくれる病院を求めて、転々とするケースが多いのではないかと。我々も答えを求めているわけなんですけれども、答えがないですね。」
アナウンス)治療を引き延ばせば伸ばすほど、病院経営としては、その都度売り上げが上がっていくという事実もあります。

以上が「クローズアップ現代」の内容です。

不妊治療は、医療的技術の発達によって生まれました。技術が先行しているため、患者目線に立つ精神的ケアの必要性が軽視されてきた経緯があります。カウンセリングの必要性、患者相互の話し合いの場の必要性をもっと考えるべきではないかと思います。

不妊治療を続けてきた人の中には、自分を見つめることにより、自分は本当は何を望んでいるのかわかってくる人もいます。産みたいのではなく、子どもを育てたいのだと気づいた人も中にはいます。そのような人が養子縁組や里親になることを考え始めた時、最も身近な自治体である市に気軽に相談できる場があることは大切です。

本市は、本年度「子育て何でも相談・応援センター」を開設しました。

HP上に紹介されている本市の「子育て何でも相談・応援センター」の記載には、「妊娠前から妊娠・出産・子育て期のさまざまな相談に応じるセンターを開設しました」とあります。
しかし、「このようなことで悩んでいませんか?」の項目には、妊娠前の相談の記述はありません。不妊に悩む方の中には、何でもとうたっていながら、自治体は、妊娠しているとか、赤ちゃんのいる人の相談しかのってくれないんだと思うのではないでしょうか。

質問します。

1 出生数の現状と不妊治療の増加について

 ① 近年の不妊治療の動向を鑑み、今後大和市として妊娠を望む市民の心のケアにどう対応していくべきか、市長のお考えをお聞かせください。

② 一般不妊治療及び特定不妊治療費助成の平成26年度から28年度の申請数と助成数、およびそれぞれの妊娠率についてお答えください。

 2 不妊治療に関する相談について

 ①不妊治療の継続などの悩みに対応できる機関は大和市にあるのでしょうか。

②子育て何でも相談・応援センターは、妊娠していない人も相談ができることをもっと広報してはどうでしょうか。

③そのために、相談に対応する保健師が不妊カウンセラーの研修を受講するなど、スキルアップを図るべきではないでしょうか。

④特に不妊治療を行っている女性は精神状態がナイーブになっていることが多いものです。

不妊助成申請や相談にのる時の窓口を別の階に設けるなどの配慮のある位置配置にすべきではないでしょうか。

 

答弁

(1)出生数の現状と不妊治療の増加について

①妊娠を望む市民の心のケアへの対応について(市長)

本市はこれまでも子どもが生き生きと育つ街の実現を目指し、妊娠前の時期を含めた子育て支援施策に力を入れてきているところです。本市においては国に先駆けた不妊・不育症治療費助成制度創設など子どもを望む方への支援を積極的に実施しており、このような取り組みも功を奏してか、大和市の合計特殊出生率が平成17年には1.3だったものが平成27年には1.46と県内19市の中で1位となり、全国平均を上回る結果となっています。

平成29年4月からは、子育て何でも応援センターに専任保健師を配置し、妊娠を考えたときから妊娠出産育児期のすべての時期に対応する相談支援が行えるよう体制を強化しました。

今後、利用者から不妊に関する具体的な相談があった場合には、ていねいに相談に応じ、より専門的な内容については、早期に専門機関と連携を図るなど、引き続きご利用者の心に寄り添った子育て支援施策を積極的に推進してまいります。

②一般不妊治療及び特定不妊治療費助成の平成26年度から平成28年度の申請数と助成数、およびそれぞれの妊娠率について
・一般不妊治療

平成26年    平成27年    平成28年

申請数  144      150      123

助成数  142      148      122

妊娠率  42.3%    31.1%    32.0%

・特定不妊治療

平成26年    平成27年    平成28年

申請数  288      302      209

助成数  286      302      209

妊娠率  23.1%    28.1%    38.8%

(2)不妊治療に関する相談について

①市内に不妊治療の継続などについて相談できる機関はあるのか

子育て何でも相談・応援センターでは、不妊治療の基本的な相談に応じていますが、すでに治療を始めている方の今後に関することや治療の継続ついてなどより専門的な対応が必要な場合には、神奈川の不妊不育専門相談センターにおつなぎしています。

②子育て何でも相談・応援センターは妊娠していない人も相談できることをもっと広報したらどうか

センターの設置に伴い、妊娠前から妊娠出産子育ての各時期の相談が行えることについて市のHPの他、市内約250か所に設置されている広報PRボードや医療機関、保育園、幼稚園などにもポスターを掲示し広く周知に努めたところです。今後につきましても、継続的に機会をとらえ、広報やまとやHPなどを活用した周知を図ります。

③保健師が不妊カウンセラーの研修を受講しスキルアップを図るべきではないか

本市では県が毎年実施する不妊・不育相談研修を保健師に受講させ、不妊や妊娠出産に関する一般的な相談を実施しているところですが、不妊症に関する専門相談については、医師、助産師、心理士による対応を行っている不妊不育相談センターをご紹介しております。

不妊に関する専門相談は、高度な専門知識が必要であり、国は専門医療機関や都道府県、政令指定都市などの実施を支援していることから、当面は不妊不育専門相談センターをご案内しながら、引き続き職員の相談対応能力の向上に努めてまいります。

④不妊治療費助成について窓口を配慮ある配置にするべきではないか。

一般、特定不妊治療費の申請窓口は、保健福祉センター2階となりますが、本年4月に子育て何でも応援センターを開設するにあたり、プライバシーに配慮したカウンターの導入を図り、隣のブースとは隔離された状況で落ち着いて相談ができるなど、効果を発揮しています。また、相談の内容に応じて個別の相談室を活用しており、安心してご相談いただけるよう配慮を行っています。

答弁後の要望

不妊治療助成に表れた本市の妊娠率が、国の統計よりかなり高いのは喜ばしいことです。また、子育て何でも相談・応援センターに関して、利用者の心に寄り添った子育て施策を積極的に推進していくという心強い市長のお言葉をいただきました。HP等も改善し、不妊治療の継続に悩む方たちも、「相談していいのだ」と思っていただけるよう広報し、市民の身近な相談所として機能していけるよう努力を重ねていってほしいと思います。

専門的な相談は、今まで通り県の相談センターを紹介するのはよいと思いますが、私がこの問題で求めているのは、いわば「愚痴を聞いてくれる窓口」です。何でも相談という名前の通り、気軽に相談できる窓口になるよう、職員のスキルアップも図っていただきたいと思います。

そして、もしこのような相談が増えた暁には、不妊治療を受けたけれど妊娠しないという同じ悩みを持つ市民同士の交流の場を作るなど、市民に寄り添った施策を展開していただくよう要望いたします。