LGBTと人権教育 〜西条市立東丹原中学校視察報告〜

2018年2月15日 10時47分 | カテゴリー: 活動報告

2月5日(月)愛媛県 西条市立 丹原東中学校を訪ねました。
三成美保編著「教育とLGBTIをつなぐ」(青弓社 2017年5月発行)の中で、前校長の岸田英之先生がこの学校の取り組みが紹介されていて、感銘を受けたからです。

丹原東中学校が目指す学校とは、「全生徒の誰もが『行きたい』と思える学校」です。すべての人が自分らしく生き生きと生活できる学校をつくる。そのためには、一人ひとりの人権が尊重されなくてはならない。そのための方法を「性的マイノリティに関する人権学習」としたところがこの学校の特色です。

丹原東中学校は、2014年と2015年、「文部科学省人権教育研究校」に指定されました。研究内容に「性的マイノリティ」の人権を取り上げたのは、前校長の強い意志によるところが大きいそうです。ちょうど、新聞でも多く取り上げられ始めた時期でもあり、「ここで取り組まないと後悔する」と校長のトップダウンにより始まりましたが、はじめは先生方にも戸惑いがあったようです。今までにない取り組みだったからです。

「性的マイノリティ」といわれるLGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Transgender )は、中学生までに約9割が自覚すると言われており、中学生である当事者にとっては真剣な悩みになり始める時期です。2015年の電通ダイバーシティ・ラボの調査によると性的マイノリティの人は人口の7.6%に上ります。学校では、クラスに2~3人はいる計算になります。

性別違和を感じる人や同性しか好きになれない人は、身近にいるはずなのに見えない。また、いないとの認識が現在の世間では一般的なので、当事者の子どもたちは、自分は変なのではないかと悩み、いじめられるのではないかと友だちにも言えず、心配するだろうからと親にも言えない。テレビを見れば笑いの対象である。こんな苦しみの中で、当事者の自殺率は平均よりかなり高いと言われています。

国も自殺率の高さに危機感を持っており、2015年4月、性同一障害に関して文科省は「性同一障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を通知しました。学校での支援体制や医療機関との連携について、保護者との話し合いについて、相談体制の充実などが述べられています。また、当事者の悩みや不安を受け止める必要性は、性同一障害の生徒だけではなく、「性的マイノリティ」とされる児童生徒全般に共通するとしています。
しかし、当事者が見えないと支援もできません。本人が悩みを打ち明けたいと望むとき、それを受け入れることができる体制を作りだすことが大切です。

丹原東中学校の4年間の実践内容は、次のようなものです。

・現地研修(まず、性的マイノリティの方が自分らしく、イキイキと生活できる社会を目指して活動している団体「レインボープライド愛媛」を訪れ、当事者の方から話を聞き、学ぶ。はじめの年は数人の先生が訪れたことを皮切りに、その後は先生と生徒の代表が参加。様々な体験談を聞く。)
・学校に当事者を招き、講演会を開く。
・授業で「性的マイノリティ」について学習する。
・文化祭で生徒たちがスタッフやキャストとしてかかわる性的マイノリティの人権を主題とする「人権啓発劇」を上演する。
・地域の地区別懇談会に生徒たちが出向き、性的マイノリティについてのクイズなどを行うことにより、自分たちが学んでいることを伝え、理解を得る活動を行う。
・生徒会を中心とし、生徒たちからの提案で現状を改善していく活動を行う。
などなどです。

2016年の生徒総会では、3つの取り組みを行うことが決まりました。
・いままでの「車いすトイレ」を誰でも使える「思いやりトイレ」に変える。
・新たな制服を作る。
(男子は学ラン、女子はセーラー服という今の制服から身体の性に関係なく一つのデザインに統一した制服に変える。上着は共通のデザインで、下はズボンとスカートから選べるようにする。)
・生徒が小学校へ出張授業を行う。
(制服を買う小学6年生に対し、中学の制服がどうして変わるのか、生徒自らが説明する)

トイレについては、その年の夏に変更し、制服については変更に向けて、現在も取り組み中とのことです。

「性的マイノリティ」を中心課題においた人権教育に取り組むことで、丹原東中学校では、互いを認め合う生徒が育ってきたといいます。また、相手のことを考えて行動できる生徒が増え、その安心からか、性的マイノリティの生徒が友達や先生に相談する事例が複数、出てきているとのことです。
当事者だけではありません。この取り組みは、ありのままの自分でいいのだという自己肯定感につながり、ありのままの他者を受け入れる学校や社会を作りだします。

講演会に参加したある生徒の感想が、この取り組みと教育の素晴らしさを表していると思います。

「ぼくは講演会に参加して、性的マイノリティの問題について悩みをかかえている人に出会ったら、何の偏見もなく接する人になりたいと思いました。そのためには、性同一障害や同性愛について、もっともっと正しく知ることが何より大切です。僕は「多様性を認め合う誰もが生きやすい社会」、そんな社会の一員になれるように、人権について考える機会を持ち続けていきたいと思います。正しい知識をもち、間違った考えや偏見から「人権」を守り、お互いを大切にしていくことを一人一人が意識していけば、社会は変わります。」

この生徒は、社会は変わる必要があるのだと考えています。
このように考える子どもたちが増えることにより、社会はいい方向に変わっていきます。
知らなければ考えず、考えなければ気づかず、気づかなければ行動せず、行動しなければこの世は変わっていきません。
まず知るということ、その教育の大切さを改めて実感した視察でした。