種子法廃止と今後の日本の食と農

2018年5月26日 11時21分 | カテゴリー: 活動報告

5月21日(月)シリウス内大和学習センター講習室にて行われた「種子法廃止と今後の日本の食と農」の講演会に参加しました。主催は、さがみ生活クラブ大和コモンズ。講師は日本の種を守る会、事務局アドバイザーの印鑰智也(いんやくともや)さんです。

昨年8月に参加した山田正彦さんの講演会と同様、経済優先政策による日本の食料の危機について理解を深めることができましたが、今回の講演では、世界の潮流は種子と食を守る方向に動き出していることを知り、少し明るい未来が見えました。

20世紀に入ってから、特に第2次世界大戦後に「緑の革命」が起こりました。それは化学肥料を食物の栽培に使いだした新しい農業の始まりです。簡単に植物が大きくなり、収穫も上がる夢のような農業、のはずでした。

本来、植物は土壌に炭水化物を放出し、微生物とミネラルの交換をすることで土壌に有機的化合物を構築しています。植物を引っこ抜くと根の周りに白く細い糸がたくさんついているのを見たことがある方もいらっしゃるでしょうが、あれは実は微生物が作り出した菌根菌糸というものだそうです。この菌根菌糸のおかげで植物は病原菌から守られ、日照りでも水持ちがよく、水害でも流されない、豊かな土壌を作っています。植物は、炭水化物を出すことで微生物に栄養を与え、微生物から生育に必要なミネラルをもらい、その身を守ってもらっています。

しかし、化学肥料を使うと植物はそこから生育に必要なミネラルをすべて吸収でき、満ち足りてしまいます。炭水化物を出す必要がないので、土の中の微生物は不活性化し、植物と微生物との共生関係は崩れてしまいます。豊かな土を作り出す菌根菌糸はなくなります。それによって植物は病害虫に弱くなり、土壌は水を保てず、土壌が流出しやすくなります。
以前、ドラマ「北の国から」の中で、大雨で畑が流されるシーンがありましたが、その中で「化学肥料に頼っているからこんなことになったんだ」というようなセリフがあったのを思いだしました。そういうことだったのか!と、うん十年ぶりに腑に落ちた感じです。

今、化学企業が農業生産の在り方を支配しだしています。種子+化学肥料+農薬の3つをひとつのセットとして売り込む工業型農業は、もう現在の農業に深く浸透しています。本来、タネは農民が保存し、農民の間で交換し、維持されてきました。しかし現在、自家採種ができないF1という種が、野菜のタネの大部分を占めています。大企業は、農薬、化学肥料とセットで使えば、大きく実り豊かに育つタネを開発し、売っています。大企業は開発したタネの知的所有権をもち、開発者の許可なしに種を保存してはいけない条約もあります。日本でも、農水省が「農家が購入した種苗から栽培して得た種や苗を次期作に使う「自家増殖」について、原則禁止する方向で検討に入った」と今年5月15日の農業新聞に出ています。例外として、在来種などは可能としていますが、大企業の開発した種が市場の大部分を占め、もし自家採種可能な種子が存在しなくなったら?

いわゆる「種子法」といわれる「主要農作物種子法」は、安定的に優良な品種のコメ、大麦、はだか麦、小麦および大豆の種子の生産を行うため、国・都道府県の責任を規定したものです。その地域にあった優良な品種の開発を都道府県で行い、優良な品種を安価に農家に提供できるようにしている法律です。いえ、していた法律でした。この法律は、今年2018年4月1日に廃止されてしまいました。廃止の理由は、「民間企業の投資意欲を割いてしまうから」だそうです。法律が廃止されるとどうなるのでしょうか?

今後危惧されることは、「多様性がなくなる」ということです。農業競争力支援強化法という法律があります。その8条3項は、次のようなものです。「農業資材であってその銘柄が著しく多数であるため銘柄ごとのその生産の規模が小さくその生産を行う事業者の生産性が低いものについて、地方公共団体又は農業者団体が行う当該農業資材の銘柄の数の増加と関連する基準の見直しその他の当該農業資材の銘柄の集約の取り組みを促進すること」。わかりにくい記述ですが、これはすなわち、効率化のために品種を少なくせよということです。
そもそも生物がこんなに多様なのは、生き残るためです。私たち動物に雄と雌がいて、その遺伝子を半分ずつ与えあい子どもを作るのは、その親と別の遺伝子を作りだすためです。その種がすべてクローンであった場合、ひとつの病気で全滅する可能性があります。それを避けるために有性生殖が生まれ、多様な生物が存在するのです。今の農業は、この自然の法則に反するものです。
また、都道府県や市町村の事業は、根拠法といって法律があるから行っているものがほとんどです。種子法という法律がなくなることにより、今後、各県の農業試験場などが規模を縮小したり廃止したりすることもあり得ます。

私たちの口にする食物は、農業は今後どうなってしまうのかと不安になるばかりですが、世界の潮流は生物多様性の確率を求める方向に動きだしているとのお話を聞いて、少しほっとしました。
地球上の生物多様性資源の権利をそれぞれの帰属国に与え、多様性を守るルールを作る「生物多様性条約」を批准している国は196か国。
農業の生物多様性を確保することの重要性と農民の種子の権利を明記した「食料及び農業のための植物遺伝資源条約」を批准している国は144か国。この条約は2013年に日本も批准しているとのことです。その9条には、締約国政府は農民の種子の権利を保護する責任があると記されています。にもかかわらず、日本の政府は経済を優先するがために種子法を廃止しました。

今、廃止された種子法に代わる種子の権利を守る法律が必要です。
新潟県と兵庫県、埼玉県は独自の条例で公的種子事業を継続しています。また、全国の60を超える自治体が種子を守ることを求める意見書を採択しています。大和市でも2017年9月の定例会で神奈川ネットが提案した「主要農作物種子法廃止に際し日本の種子保全の施策を求める意見書」を全会一致で採択することができました。

私たちの身体を作っている食料、農産物を守るため、自然の法則に基づいた農業を再び人間の手に取り戻すことが必要だと、講演を聞きながら強く思いました。化学農法や法律は人間が作りだしたものです。人間の手で作ったものは、人間の力で変えられるはずです。そのために自分ができること、それをしていこうと思います。