山崎さゆきの主張4 社会生活が不便な人から学ぶ

2019年2月18日 11時40分 | カテゴリー: 活動報告

私には恐れている未来があります。
障がい者を排除していく社会です。

2016年の津久井やまゆり園事件の後、神奈川県は「ともに生きるかながわ憲章」を定めました。共生社会の実現をめざすための憲章です。多くの人がこの事件を心から悼み、二度とこのようなことが起ることのないよう、自治体などは取り組みを進めようとしています。事件に先立つ2016年4月には、「障害者差別解消法」が施行されています。

しかし、人々の意識がすべてその方向に向いているか、疑問です。きれいごとを言っても障がい者が生きにくい世の中は、依然としてあります。生まれた赤ちゃんに障害があるとわかった時、親が不安におののき、悲嘆にくれることが多いのは、まだまだ体の障害がありながら生きることが大変な世の中であることを知っているからです。

国立成育医療研究センターなどの調査によれば、出生前診断を受ける妊婦はこの10年で2.4倍に増えています。35歳以上では、25%に上るということです。普及が急速に進んでいることに加え、妊婦の血液を検査するだけで胎児にダウン症候群などがあるかどうかを調べることができる「新型出生前診断(NIPT)」を実施することができる施設は、今後増えると予想されます。日本産婦人科学会が今まで限定してきた実施施設の要件を緩和しようとしているからです。NIPTは、2013年からの臨床研究で6万人以上が検査を受け、「陽性」が確定した人の9割以上が人工中絶を選んでいます。

今後、出生前診断は今よりもっと普通のこととなり、ほとんどの妊婦が受ける未来がやってくる可能性があります。受ける、受けないは本人の自由ですから、他人がとやかく言うことではありません。しかし、そんな世の中でも中には「受けない選択」あるいは、お腹の子に障害があるとわかっても「産む選択」をする人たちは必ずいるはずです。その人たちがまわりから「自己責任でしょ」と言われる社会、それを私は恐れています。

本来、「障害」とは、人ではなく、まわりの環境の問題です。人間は障害を乗り越えるために様々な道具を発明してきました。人間は魚のように海を泳ぐことも、鳥のように空を飛ぶこともできませんが、海を越えるためには船を、遠くに行くために汽車や車を、目がよく見えない人のためにはメガネを等、様々な発明で、できないことをできるようにしてきました。足が不自由な人は、すたすた歩ける人よりは外出するのが大変かもしれませんが、どこでも安全に車いすなどが走れる道が整備されていれば、その人は「障害者」ではありません。

ユニバーサルデザインは、どんな人でも使いやすいように進歩してきました。シャワートイレも、シャンプーボトルのギザギザも、絵文字による情報も幅の広い改札口も今では誰にとってもなくてはならないものとなっています。障害があるからこそ、人間はそれを乗り越えようとしてきたのです。

以前、伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(光文社新書)という本を読み、大変感銘を受けました。伝手を頼って著者にお話を伺ったこともあります。目の見えない人は、目の見える人が知らない世界を知っています。音声翻訳で本を3倍速で読めたり、目が見えていたのでは見逃してしまう地面の高低を感じたり。「春の海」で有名な箏曲家、宮城道夫のエッセイをかなり昔に読んだ時、寒い夜に布団から手を出さずに読める点字図書についての記述があり、便利だな~と思った記憶があります。

仕事でも生活の中でも、体の不自由な人から学ぶことは多くあります。神奈川県主催のインクルーシブ教育の講演会で、綾瀬市の会社の社長さんがおっしゃっていました。特別支援学校の卒業生が入社するようになって後、卒業生が楽しそうに一生懸命仕事をする姿を見て、仕事のあるありがたさを他の社員が認識するようになったと。

誰でも歳を取ったり大きなけがや病気をしたりすれば、体が不自由になります。誰かを排除する社会は、自分自身を排除することに繋がります。体や知的な能力は、残念ながら皆に平等に与えられてはいません。しかし、みなが等しく社会の権利を受けられる社会は、人間が作りだすことが可能です。

インクルーシブな世の中をめざして、福祉、教育への発言を続けていきます。

 

共生社会等についての過去の発言は、下記の記事もご覧ください。

2015年 10月  障がい児支援について

2015年 12月  インクルーシブ教育について

2016年  8月  相模原殺傷事件 ―我がこととして

2017年  2月  夢の学校 ―インクルーシブ教育の実践

2017年  4月  支援が必要な子どもたちとともに

2017年  7月  「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」に参加しました

2017年 12月  妊娠相談の拡充について

2018年  7月  安心して歩くために道にベンチを