不登校は問題行動にあらず―川崎市子ども夢パークの取り組み

 

10月18日(金)川崎市子ども夢パークを見学し、所長であり「フリースペースたまり場」の理事長、西野博之さんのお話を伺いました。

子ども夢パークは、2000年に施行された「川崎市子どもの権利に関する条例」第27条によって2003年7月にオープンした施設です。

第27条:子どもには、ありのままの自分でいること、休息して自分を取り戻すこと、自由に遊び、若しくは活動すること又は安心して人間関係を作り合うことができる場所が大切であることを考慮し、市は、居場所についての考え方の普及並びに居場所の確保及びその存続に努めるものとする。
2.市は、子どもに対する居場所の提供等の自主的な活動を行う市民及び関係団体との連携を図り、その支援に努めるものとする。

全文は、下記をご覧ください。

「川崎市子どもの権利に関する条例」

子どもたちへの虐待、子どもの不登校、学校での暴力行為、いじめ、自殺は年々増加しています。格差の拡大の中で子どもに対するネグレクトや過干渉は増え、ストレスをためる子どもたちが大勢いるのが今の世の中です。
自己肯定感が低く、本音を話せる場所がなく、自分を追いつめて暴力などの問題行動をおこしたり、学校に行けなくなったりする子どもはたくさんいます。

その原因の一つに、大人の不安があります。
正しい親に見られたい、評価してもらえる子どもに育てたい、人に後れを取ってはならないなど、「完璧」「正しさ」を求める親の姿勢が子どもたちを追い詰めます。子どもが「普通」から逸脱してしまうと、親として世間に認められない、恥ずかしい。だから子どもには学校でいい成績を取ってほしいし、スポーツに励んで明るく生きてほしい。いい学校に入れば、将来が約束される。だから勉強しなさい。それがあなたの将来のためになる。あなたのためを思って言っているんだ、という親の気持ち。誰でも少しは思い当たるのではないでしょうか。それが普通とされているのが、今の世の中です。

夢パークは、子どものありのままを受け入れ、自己肯定感を育む場所づくりに力を入れています。学校に行けなくなってしまった子どもなどが毎日、たくさん集まっています。
「生きている」ただそれだけで祝福され、「生まれてくれてありがとう」「あなたが生きていて幸せだよ」と伝えるためにここがある、と西野さんははっきりおっしゃいました。
「発達障害」はひとつの文化と捉える。問題行動を起こす子どもは「困った子」ではなく、「困っている子ども」と理解する。不登校は、「甘え」でも「怠け」でも「弱さ」でもない。学校に行かない理由は子ども自身にもわからないことが多いので追求せず、朝起きられないなど体に症状が出ているときは、体の声を聞くしかない、と理解すること、そしてこのままの状態がずっと続くわけではないと伝え、親の不安に寄り添うこと。その上での様々な活動があります。

夢パークには「ありのままの自分でいられる場」「作り続けていく場」「自分の責任で自由に遊ぶ場」「子どもたちが動かす場」「多様に育ち学ぶ子どもの場」など、子どもが、そして大人も自分を取り戻すことができる場がたくさんあります。土でドロドロになること、火を使うこと、高いところから飛び降りること、すべてOKです。オープンから16年たち、子どもたちは学校に戻っていったり、体を使う技能に目覚めたり、勉強がしたくなったり、様々な将来に向けて歩んでいきました。入所希望者は、後を絶ちません。日本国内や外国からの視察も相次いでいます。

2016年9月文科省は、「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知を出しました。
その中には、「不登校とは、多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはならない。」という記述があります。「学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と需要の姿勢を持つことが、児童生徒の自己肯定感を高めるために重要」ともあります。

川崎夢パークは、やっと国が気づき始めたこの思想を長く実践している場です。ここがあることによって救われた子どもがたくさんいます。残念ながら、公立でこのような場がある市町村はわずかです。子どもが生きやすい世の中は、大人も生きやすい世の中です。生きやすい社会の構築のために、私たち一人ひとりが考え、実践していかねばならないと実感したひと時でした。