大和市の「こもりびと」対策 就労準備支援事業の拡充で伴走しながらの支援を 2021年3月一般質問より

「こもりびと」は、「引きこもり」の方の大和市独自の呼称です。NHKが昨年末、この呼称で引きこもり問題を連続して取り上げ、松山ケンイチや武田鉄矢の出演によるドラマも放映されました。「こもりびと支援窓口」は2019年10月に開設されましたが、テレビの影響もあってか認知度も上がり、ご家族やご本人からの相談件数も増えています。この2月末までに、相談者数は144人、そのうち当事者自身からご相談があったのは55人に上ります。

相談する場所があり、家族や本人の集いの場所を作っている大和市の取り組みは窓口開設前より格段に進歩したといえるでしょう。相談する場所があるということは、当事者や家族にとって希望の灯です。相談後は家族間の関係がよくなったなど、変化もみられるようです。

今回の一般質問は、「こもりびと」が社会に出ていこうとするための支援を大和市でどのように行っているのか整理しました。また、こもりびとが社会への一歩を踏み出すために必要な事業である「生活困窮者自立支援制度」の中の「就労準備支援事業」が現在の大和市の規定では使えないことを指摘し、福祉の観点で事業を拡大するよう提案を行いました。

1、「こもりびと支援窓口」の現状把握

相談者144人のうち、50歳未満の方の割合は 67.4%、50歳以上の方は 32.6%となっています。40歳未満に限ると44.4%です。相談されている「こもりびと」の年齢層はかなり高いことが分かります。
144人のうち、何らかの支援に結び付いた方は23人です。県央地域若者サポートステーション、厚木保健福祉事務所大和センター、 大和市社会福祉協議会の自立相談窓口が主な受け入れ先です。県央地域若者サポートステーションは、就労に関心を持った50歳未満の方が対象です。国が委託する就労支援機関であり、履歴書の作成指導や面接練習だけでなく、コミュニケーション講座や協力企業への就労体験など、複数のプログラムが用意されています。場所は本厚木にありますが、週に1回大和市のシリウスに出張しており、ここで対応することが多いようです。障害が認定されていない場合や経済的に困窮していない場合、こもりびとに向けた大和市独自の支援場所は、ほとんどありません。

2、生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業について

就労準備支援事業は、何らかの事情で就業が難しかったり、人と会うのが怖い人などが、ボランティア活動や短時間の作業などを繰り返すことにより、少しずつ少しずつ社会になじんでいくためにあるものです。「こもりびと」を受け入れるためにあるような事業です。
生活困窮者自立支援事業は、2015年、生活保護に到る前の第2のセフティーネットとして整備されました。大和市は昨年4月から就労準備支援事業を生活援護課の直営で行っています。対象者は経済的に困窮している方や、保護者が年金のみで暮らしているなど、将来困窮が予想される方等です。生活保護受給者も対象です。こもりびとは無収入の方が多いと思いますが、家族に一定以上の収入がある場合、この事業を使うことはできません。つまり、親が働いている「若いこもりびと」は、大和市ではほとんど事業の対象にはならないということです。

3、困窮者の意味

「生活困窮者」とは、どのような方でしょうか。私は何らかの理由で今のままでは嫌だと思い、困っている人だと思います。お金のあるなしではありません。生活困窮者自立支援制度は、経済的に困っている人を自立に促すために始まりましたが、2018年の法改正により、地域社会からの孤立を防ぐことが制度の目的となりました。法改正後、厚労省からも「対象者を必要以上に限定しないよう」にという通知が出されました。例えば座間市は「生活困窮者とは経済的な支援が必要な市民ととらえるのではなく、生活の困りごとがある市民ととらえる」として、引きこもりの方を支援の対象としています。
仕事をせず、家庭内にこもっていられることは、ある意味恵まれた境遇ともいえます。それは、働かなくても生きていけるということであり、時間もたっぷりあります。家族には何らかの収入があり、依存が許されている状況です。ただし、本人に収入はなく、社会的に孤立しており、本人や家族は将来について悩み、大きな不安の中で生きています。
就労準備支援事業は、社会から孤立していた人が生活のリズムを取り戻し、社会に適応できるような常識等を知り、自分のできることは何かを探りながら、少しずつ少しずつ社会に出ていくためにあるものと私は解釈しています。そこには社会に出る体験を積むためのボランティアと就労の境目である中間就労を含まなければ、社会に慣れていない人はついていけません。本人が自立したいと願い、努力し始めても時間がかかることが多いと予想されます。本人の努力やまわりの支援により、生活を支えられる就労にまで結びつくことができても、そこまでには年単位のかなりの時間がかかるはずです。

日々の生活に困り、金銭的にあまりに余裕がない状況では、ゆっくりと時間をかけて研修を受けたり、ボランティアをしたり中間就労の実習をしたりできる余裕はないはずです。よって、就労準備支援事業は、経済的に生活に困窮していない時点で準備を進めないと遅く、機能しないはずです。
大和市の就労準備支援事業は、現在9人の方が利用しています。生活保護を受けている方も対象です。この度、生活困窮者自立支援制度の中でこの事業を利用している人が何人いるか質問してみました。答えは0人です。利用者は、すべて生活保護を受給している方です。そうなるでしょうね。経済的に困っていて、金銭的支援がなければ、ゆっくり準備している時間はありません。

4、実りある支援にするために

現在の大和市の規定のままでは、せっかく就労準備支援事業があっても生活困窮者自立支援制度に則った実質的な支援は難しいと思います。現在の「こもりびと支援窓口」は、相談を受け、年4回予定の集いを行い、他の支援先につないでいるという機能を持っています。ただ、社会に出ていくための研修や訓練など、実際の支援は行っていません。こもりびとの支援を大和市内で行っていくために、就労準備支援事業を生活保護を管轄している生活援護課内の事業にとどめることなく、社会福祉の観点から対象者を広げた事業を展開すべきです。
今回の提案の市側の答えは、「こもりびと支援窓口」も「就労準備支援事業」も、まだ始まったばかりだからこのままの体制でいくという内容でした。ただ、このままでは行き詰るのは目に見えています。「こもりびと支援窓口」に相談に来ている方、特に当事者で相談に来られている方は、「なんとかしたい」方だと思います。その方たちが社会に向かって少しずつ歩みを続けていくために、大和市内で伴走しながら支援を続けていく事業を行っていくことは急務です。
生活困窮者自立支援制度は、「相互に支えあう地域の構築」も目標にしています。福祉を通した街づくりの観点から事業を行うことで、市民が安心して暮らせる街づくりの一助となるはずです。

 

 

以下は、当日の質問内容と答弁の概要です。質問は、答弁は

 

「こもりびと支援窓口」と「就労準備支援事業」について

中項目1、「こもりびと支援窓口」の現状について(現状を確認する)

令和元年10月に「こもりびと支援窓口」が開設されてから1年半が経過しました。テレビ放映の影響もあり、「こもりびと」という温かいぬくもりを持つ言葉は、大和市民にも広がりつつあると思います。先日の市長による令和3年度施政方針での言及では、今年1月末時点で134人の方から603件の相談があったということです。開設から1年の時点では、当事者97人、相談件数のべ390件だったとのことですので、この半年でさらに増加していることが分かります。今まで見えなかった市民の困りごとが見え始めた「窓口」の意義は大きなものであると、市民の1人として開設を感謝しています。専任の「こもりびとコーディネーター」を中心に丁寧な対応により相談者が増え、家族間の関係が回復し、当事者や家族同士の集いの場を作るなど、この窓口は相談者たちにとって心の支えになってきていると思います。

相談する場所があることによって家族や本人が精神的に楽になり、他の家族や当事者との交流により、悩んでいるのはひとりではないと認識することで前向きな気持ちになるためには相談体制が整っていることは重要です。ただ、「支援窓口」と謳っている限り、相談だけに終わらせず、本人に寄り添い、伴走しながら支援していく体制を持っていることが必要です。年単位の時間がかかると思いますが、支援のめざすところを持っていなければ事業を行う意義はないと考えます。

「こもりびと支援窓口」のHPの記述では、「国はひきこもりについて、仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態としています。」と解説しています。赤ちゃんや病気等で寝たきりの人、介護や家事労働を担っている人は家にこもっていても「ひきこもり」とは言いません。本来、外に出て活動できるはずの健康な人が家にこもっていることは、働かなくても生活できているのですから、ある意味とても贅沢な状況ですが、人間は、「こうであるべき」という世間的常識や「将来への不安」から世間一般の状況から外れるととても悩んでしまいがちです。

窓口にきて「相談する市民」は、今の状況を脱して「何とかしたい市民」です。当事者が大人であったら、本人や家族の究極的な願いは「社会的自立」なのではないでしょうか。ただ、長年引きこもってきた相談者が自立するのは、非常に困難であることが予想されます。しかし、それを助けることが「支援」であると私は思います。

1、「こもりびと支援窓口」が目指すところはどこでしょうか?

市長答弁

 それぞれの相談者における最終的な支援目標については、就労や就学の他、家族間における関係性の修復やこもりびとご本人が社会の中で安心できる居場所を見つけることなど、多種多様であり、画一的なものではないととらえている。

 そのため本市としては、相談者おひとりおひとりの声にしっかり耳を傾け、寄り添いながらそれぞれの相談者の状況に応じて必要な支援を見極め、ご本人やそのご家族が社会から孤立せず、安心して過ごせるようきめ細やかな支援を着実に進めていく。

「こもりびと」には様々な年齢の方がいらっしゃいます。他自治体の支援結果では、若い人ほど柔軟性もあり、支援により社会に出ていける人が多いようです。就労支援窓口のひとつである「若者サポートステーション」の若者の定義は、最近年齢幅が広がり、49歳までとなっています。

2、現状の相談者について伺います。令和3年2月までの当事者ご本人が相談に来られた人数とご家族が来られた人数をお答えください。

また、当事者の年代とそのうち、「若者」の範疇である50歳未満の割合と50歳以上の割合をお答えください。

 健康福祉部長答弁(以下ずっと)

窓口を開設してから令和3年2月末までの間において、 ご相談のあったこもりびと当事者総数は144人であり、そのうち55人がこもりびとご本人からのご相談である。

10歳代が9人、20歳代が23人、 30歳代が32人、40歳代が33人、

50歳代が27人、60歳代が12人、70歳代以上が8人

50歳未満の方の割合 67.4%、

50歳以上の方 32.6%

当事者及び家族の「集いの場」は今後の生き方に前向きになれる大切な場と考えます。特にご本人の参加者は、自分の状況を変えたいと思っておられる方と思います。当事者の集いの場は、今まで2回行っていると聞いています。

3、集いの場に本人が来ている人数をお答えください。

令和2年9月が5人、12月が3人(12月の3人は2回目の参加者)

市長の施政方針や12月のご答弁では、就労することで再び社会とのつながりを持つことができた事例もあるということです。支援窓口の案内文にも「適切な制度の案内や相談機関への取次」とあります。

(質問)(相談者のうち、どれぐらいの方が支援に向かって動き始めているか確認する)

4、当事者のうち、支援に向けた関係先につないだ方の人数と関係先について 

取り次ぎが多いのは、 県央地域若者サポートステーション、厚木保健福祉事務所大和センター、 大和市社会福祉協議会の自立相談窓口であり、実人数としては、合計23人である。

5、ご本人が就労に関心を持ち始めた場合の対応について

こもりびとご本人が就労への関心を持ち始めた場合には、国が委託する就労支援機関であり、履歴書の作成指導や面接練習だけでなく、コミュニケーション講座や協力企業への就労体験など、複数のプログラムが用意されている地域若者サポートステーションに取り次ぎ、 新たな支援段階へと移行する。

しかしながら、地域若者サポートステーションについては、 対象年齢が50歳未満と設定されていることから、相談者の状況に応じて、 自立相談窓口など、複数の関係機関を効果的に使い分けながら、 ご案内をしている。

長年引きこもっている当事者の中には精神的な障害が疑われる方もおられると聞いています。

6、障がいが疑われる場合の対応について障がいが疑われる場合の支援に向けた関係先はどのようなところですか。
 ただ、本人や家族が障害を受け入れられない場合もあるはずです。その場合の支援に向けた関係先はどのようなところですか。

こもりびと当事者の中には、こころの健康に関する専門的な支援が必要と考えられる方も多いため、必要に応じて、医療機関や市担当課のほか、医師や専門相談員による精神 保健福祉相談を実施する厚木保健福祉事務所大和センターなどにつなげている。

なお、ご本人やご家族が専門機関による支援を希望されない場合については、相談支援を継続するとともに、必要に応じて適切な制度のご案内や関係機関への取り次ぎを行う。

 

中項目2、生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業について

(現状を確認し、大和市の制度では経済的に困窮していないと「こもりびと」の支援には結びつかないことを明らかにする)

2020年4月から大和市は生活困窮者自立支援制度における就労準備支援事業を生活援護課内において直営で開始し、生活保護受給者と生活困窮者を対象に事業を行っています。専任の支援員1人が中間就労の実習先などを探す仕事をしておられるとのことです。

HP上の厚生労働省の説明によると制度の就労支援準備事業は次の通りです。

「社会との関わりに不安がある」、「他の人とコミュニケーションがうまくとれない」など、直ちに就労が困難な方に6カ月から1年の間、プログラムにそって、一般就労に向けた基礎能力を養いながら就労に向けた支援や就労機会の提供を行います。一定の資産収入に関する要件を満たしている方が対象です。

1、生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業の対象者は、どのような方でしょうか。

対象者は「経済的に困窮している方」「将来的に困窮するおそれのある方」

2、「こもりびと支援窓口」からどのようにつないでいますか。 

「こもりびと支援窓口」からは、社会福祉協議機会、自立相談窓口に繋いでいる。

3、紹介者の人数について。

これまでに5人繋いでいるが、就労準備支援事業利用者はない。

4、紹介後の状況について

その後は、就労した方が3人、就労支援中の方が1人、通院中の方が1人

「こもりびと」は働かなくても「こもっていられる人」ですから、家族が経済的に困窮していない場合、本人も生活に困窮はしていないと解釈することもできます。

5、現在、大和市において「こもりびと」が就労準備支援事業を利用したい場合、家庭が経済的に困窮していない状態であったなら、就労準備支援事業を利用することは可能でしょうか。 

「経済的に困窮しない方」は対象外

 

こもりびと支援窓口につながっている市民の人数は2月末までに、144人、そのうち、ご本人が相談に来られている人数が55人とのことでした。今まで見えていなかった方たちが何らかの支援を求めて動き出せていることはうれしいことです。当事者の集いも関わり合いの広がりという意味で、意義あることと思います。2回行われた会の参加者は5人と3人とのことですが、以前聞いたところ、3人の方は2回目の参加とのことです。50歳未満の人が67.4%ですが、40歳未満になると44.4%で結構年齢層は高いことが分かります。

当事者144人のうち、23人の方が相談以外に何らかの支援につながっているとのことです。詳しい答弁は差しさわりがあるところもあるようですが、県央若者サポートステーションへの紹介が一番多いようです。50歳以上の方やこころの健康に関する問題を抱えておられる方は対応の難しさがありそうです。県央若者サポートステーションからの情報によりますと途中で来なくなってしまう方もおられるとのことですので、全員が現在も社会参画に向かって活動をされているというわけではないかもしれませんが、こもりびと支援窓口とのつながりを保ちつつ、少しでも多くの方が前向きな気持ちになってくれることを願います。

若者サポートステーションは基本的に就労に向けた意思のある方のためのものですが、社会から隔絶された状態からの脱出にはもう少し緩やかな階段も必要です。生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業は、うまく使うならば、こもりびと対応に効果を発揮する事業だと私は思っています。就労と名前はついていますが、家族と離れて自立するまでには時間はかかり、ボランティア活動や週に1日とか、短時間の作業を行うことによって徐々に社会に出ていくのが怖くなくなる、そういう準備をするための事業です。

ただ、この事業の対象者は、大和市においては、ご答弁にあった通り、「経済的に困窮している方」「将来的に困窮するおそれのある方」であり、「経済的に困窮しない方」は対象外です。つまり、家庭が経済的に困難な場合や親が年金のみで暮らしており、親の死亡後は困窮が予想されるなどの方が対象です。これですと、親がまだ壮年で働いている若い年齢のこもりびとは対象になりえません。前にも触れたように、若い人ほど柔軟性が高く、社会に出ていける可能性があります。しかし、この若い人ほど、事業の対象になれないということです。

生活困窮者自立支援制度の一つのメニューなので、どうしようもないかと思われるかもしれませんが、2018年に法改正が行われ、この事業は引きこもりの人を対象にすることができるようになっています。次にそのことを詳しくのべます。

 

中項目3、生活困窮者の意味について

(「こもりびと」も生活困窮者であることを述べる。就労準備支援事業は、社会的孤立にある人も使うことができるように制度が改正されたこと。準備事業のメニューや中間就労は本当にお金に困っている人では使えないことを述べる。)

生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至らないための最後のセーフティネットとして2015年に始まりました。対象となるのは、「現在生活保護を受給していないが、生活保護に至る可能性のある者で、自立が見込まれる者」となっています。

現在、国庫負担が4分の3の必須事業として「自立相談支援事業」とコロナ禍では多数の市民が申請を行い、先日給付期間がさらに延長された「住居確保給付金の支給」があります。

その他に任意事業として国庫負担3分の2の「就労準備支援事業」「一時生活支援事業」、国庫負担2分の1の「家計改善支援事業」「子どもの学習・生活支援事業」があります。

大和市では先に述べたように2020年4月から就業準備支援事業を始めたところです。この事業は2018年の法改正によって努力義務となり、近々必須事業になるはずなので、それ以前に始められたことは良かったと思います。大和市のこの事業は生活援護課が生活保護の人も対象にしています。昨年、神奈川ネットでは就労準備支援事業についての調査を行いましたが、県内では委託が多く、直営は珍しいようです。

その他に、制度としては「都道府県知事等による就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)の認定」があります。就労準備支援事業を積極的に行っている他市の状況を見ると、就労準備支援事業の中に中間的就労を入れ、ゆっくりと支援に向かって活動をしているところもあります。

8050問題ともいわれますが、高齢に差し掛かった「こもりびと」は、親の死亡などにより家族の収入がなくなると、引きこもったままでは餓死したり、自殺する危険があります。行政の窓口など社会につながっても、資産を処分した後に生活するほどの収入がない場合、生活保護を受給することになります。

生活困窮者自立支援制度は、生活保護受給者にならないための対策ですから、たとえ現在生活に困窮していなくても就労準備支援事業で自立に向けた対策を行うことは事業の趣旨にかなっているはずです。生活困窮とは、経済的な問題だけでなく、情報の不足や社会との接点がない人も含まれるはずです。例えば座間市はこのような観点から事業を行っています。「生活困窮者とは経済的な支援が必要な市民ととらえるのではなく、生活の困りごとがある市民ととらえる」として、支援の対象としています。

2015年に施行された生活困窮者自立支援法は、2018年に改正されました。特に第2条に「基本理念」が加わったことは大きな一歩であり、どんな人でも「断らない支援」のための法整備がなされたといえます。福祉政策の専門家である中央大学教授の宮本太郎氏は、「地域社会からの孤立を解消することが、生活困窮者自立支援制度の目的であることがこの改正によって明示された」と説明しています。

改正で付け加えられた条文は、

第2条「生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ、生活困窮者の就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて、包括的かつ早期に行われなければならない。」

というものです。

厚生労働省社会・援護局長は、改正法の施行にあたり、「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律の一部施行について」という通知を都道府県知事あてに出し、「今回施行される改正政令及び改正省令について、その趣旨及び主な内容を下記のとおり通知するので、十分御了知の上、管内市町村をはじめ、関係者、関係団体等に対し、その周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏のないようにされたい。」としています。

通知の第3 「改正省令による生活困窮者自立支援法施行規則(平成 27 年厚生労働省令第 16 号)の一部改正」では、生活困窮者就労準備支援事業の対象者の要件として、
(1)年齢要件の撤廃
(2)資産収入要件の明確化
が示され、(2)の中には、アとイという規定があります。
アは、収入要件。イは、アに準ずる者として、自治体の長が事業による支援が必要と認める者。 イの後に下記の記述があります。
「しかしながら、世帯単位でみると収入があるものの本人に収入がなく何かのきっかけで困窮に陥る事例や、家族の意思が確認できないことなどにより世帯全体の資産収入を把握できない事例も想定されることから、生活困窮者就労準備支援事業による必要に応じた予防や早期的な対応を図るため、対象者の範囲を自治体ごとの状況に応じて必要以上に限定しないよう、 生活困窮者就労準備支援事業の対象者の要件について、上記イに該当する者の明確化を図るもの。」
つまり、2018年の法改正によって生活困窮者自立支援事業の就労支援準備事業は「ひきこもり」の人を対象とすることができるようになっています。
 仕事をせず、家庭内にこもっていられることは、ある意味恵まれた境遇ともいえます。それは、働かなくても生きていけるということであり、時間もたっぷりあります。家族には何らかの収入があり、依存が許されている状況です。ただし、本人に収入はなく、社会的に孤立しており、家族は当人の将来について悩み、大きな不安の中で生きています。
就労準備支援事業は、社会から孤立していた人が生活のリズムを取り戻し、社会に適応できるような常識等を知り、自分のできることは何かを探りながら、少しずつ少しずつ社会に出ていくためにあるものと私は解釈しています。そこには社会に出る体験を積むためのボランティアと就労の境目である中間就労を含まなければ、社会に慣れていない人はついていけません。本人が自立したいと願い、努力し始めても時間がかかることが多いと予想されます。本人の努力やまわりの支援により、生活を支えられる就労にまで結びつくことができても、そこまでには年単位のかなりの時間がかかるはずです。
日々の生活に困り、金銭的にあまりに余裕がない状況では、ゆっくりと時間をかけて研修を受けたり、ボランティアをしたり中間就労の実習をしたりできる余裕はないはずです。よって、就労準備支援事業は、経済的に生活に困窮していない時点で準備を進めないと遅く、機能しないはずです。
2020年12月山田議員の質問では、現在の就労準備支援について、
「11月末までに9人の参加となっており、支援の内容は、生活リズムを取り戻すためのラジオ体操やマスク作成等の作業訓練、また社会訓練として、障害者の作業所、デイサービス施設等でのボランティア活動を行っております。」と健康福祉部長は答弁されています。内容としては、中間就労より前段階のボランティア活動などで訓練を行っていることが分かります。先ほど述べたように、大和市の就労準備支援事業は生活援護課が行っており、生活保護の方も対象です。

1、現在の就労準備支援事業の対象者9人のうち、生活保護受給者以外の方は何人ですか。
 現在は生活保護受給者以外はなし

事業が始まる前から生活保護受給者以外にも就労準備を利用した困窮者の方がおられると伺っています。

2、現在まで、生活困窮者自立支援事業の範疇で就労準備支援事業を利用した人は何人ですか。

生活困窮者自立支援事業の利用者で就労準備支援を行った人数は3人。事業所での訓練が2人、ボランティアグループが1人

 

大和市の就労準備支援事業は、現在は生活保護を受給している方だけが利用していることが分かりました。事業が始まる前に少し実績はあるようですが、現在の規定のままでは、せっかく就労準備支援事業があっても生活困窮者自立支援制度に則った実質的な支援は難しいと考えます。そこで、今後への提案を述べます。

 

中項目4 実りある支援にするために

現在、大和市の「こもりびと支援窓口」は相談と年に数回の当事者や家族の集い、他部署への支援の振り分け機能を持っているといえると思いますが、自立に向かうための支援は、ほとんどが「県央若者サポートステーション」頼りのようです。サポステにヒアリングしたところ、「こもりびと支援窓口」が開設してから、大和市の相談件数は増えており、相談のあった人への継続した支援はできているとの返答でした。ただ、ほとんどが週に1回のシリウス開所時の相談に限られており、相談等のすべてに対応できているわけではないようです。県央若者サポートステーションは、本厚木駅から徒歩5分ほどのアミティーという建物内にありますが、今まで社会的に孤立していた人には、厚木まで通うには、身体的、精神的、経済的に負担が大きいと考えます。

また、若者サポートステーションには年齢制限があります。現在は49歳までと若者とは言えない年齢の方も対象になってはいますが、ご答弁によると「こもりびと」には50歳以上の方も32.6%おられます。この方たちが社会に出ていくためには、低年齢の方よりさらに困難が予想されます。しかし、年齢撤廃をしている就労準備支援事業なら、少なくとも受け入れを閉ざすことにはなりません。
大和市内で対象者の支援を行う事業をしてこそ、こもりびとにとっての「支援窓口」なのではないでしょうか。
 「こもりびと」のうち、精神的障害が疑われるにもかかわらず、自身で障害が受け入れられない家族や本人にも市内でゆっくりと対応していくことで自己認識も深まり、障害関係の支援につながる可能性もあります。

生活困窮者自立支援法の2018年の法改正2条の第2項では、「生活困窮者に対する自立の支援は、地域における福祉、就労、教育、住宅その他の生活困窮者に対する支援に関する業務を行う関係機関及び民間団体との緊密な連携その他必要な支援体制の整備に配慮して行わなければならない」。としています。

(質問)(就労準備支援事業の再構築の提案)
1、生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業の対象者を拡大し、他部署を巻き込んでこもりびとを支援するためには、生活援護課内だけの事業にとどまらず、地域福祉の観点で行うことが、実のある支援となります。実施にあたっては、事業の再構築が必要と考えます。市のご所見を伺います。

就労準備支援事業(予算化)は今年度、「こもりびと支援窓口」は1年5カ月のため、当面、現在の体制で進めていく。

就労準備支援事業の難しいところであり、また今後の共生社会への希望でもあるところは、市民を巻き込まないと成り立たないところです。
引きこもりの若者を支援し、市民を巻き込みながら自立に向けての実績を上げている座間市の就労準備支援事業「はたっらく・ざま」では、この事業を「街づくり」であると断言しています。
市内の事業所も「こもりびと」を受け入れることによって、事業に係る市民を巻き込み、市民にとっても社会貢献をしているという人生の意義を見出すことが可能になります。
しかし、社会に慣れていない人を相手にするには相当な準備が必要です。忍耐強く対応し、社会的常識を教え、職員全員の理解を深めなくてはならないため、通常の業務とは違い時間も手間もかかります。社会貢献になるからボランティアで受け入れてほしいというのは、虫が良すぎる話です。万が一、事故等があった時のための保障も必要です。本市の就労準備支援事業は、事業所に対しては謝礼等の支払いはないため、市から働きかけがあっても受け入れに悩むという市民からの声を聴いています。

2、現在の就労準備支援事業で、受け入れ事業所で実習する場合の保険加入について、現状をお聞かせください。

ボランティア活動には、ボランティア保険、職場体験等には生活困窮者就労支援保険に加入している。

3、事業所の負担を減らし、もっと市民を巻き込んでいくために、事業所に謝礼等を支払う予算をつけるべきと考えますがいかがでしょうか。

今後も引き続き無償での協力をお願いする。

 

(答弁後要望)

ご答弁、ありがとうございました。すげないお答えでしたが、2つの事業はまだ始まったばかりだから、というのも理解はできます。ただ、このまま続けても今後、著しい変化があるとは思えません。

「こもりびと支援窓口」については、知名度が上がるにつれて年々相談者が増え、当事者や家族同士のつながりが生まれ、強固になり、支援がうまくいって社会に出ることができた元こもりびとの方が支援する側に回るなど、新たな支援体制が生まれるといいな、とは思いますが、人数が増えれば増えるほど、県央サポートステーション頼りの今の状況を再考しなくてはならないかもしれません。

生活困窮者自立支援制度開始当時の2015年の厚労省の資料によると、

「制度の意義」は、「生活保護に至っていない生活困窮者に対する「第2のセーフティネット」を全国的に拡充し、包括的な支援体系を 創設するもの。」

制度のめざす目標の2つめには、

「生活困窮者支援を通じた地域づくり とあります。

・生活困窮者の早期把握や見守りのための地域ネットワークを構築し、包括的な支援策を用意するとともに、働く場や参加する場を広げていく。(既存の社会資源を活用し、不足すれば開発・創造していく。)

・生活困窮者が社会とのつながりを実感しなければ主体的な参加に向かうことは難しい。「支える、支えられる」という一方的な 関係ではなく、「相互に支え合う」地域を構築する。

となっています。

現在の大和市の生活困窮者自立支援制度はこの「生活困窮者の早期把握や見守りのための地域ネットワークを構築」したり、「相互に支え合う」地域を構築するという視点はあるでしょうか?生活困窮者自立支援事業は、大和市では「一人ひとりがささえの手を実感できるまち」の位置づけの中の一つです。ささえの手を実感するとは、市民一人ひとりが相互に支えあって、もし自分が生活に困難な状況に陥っても安心して暮らせる街にしていくことだと思います。

就労準備支援事業の対象者を拡大して使いやすいものにし、「こもりびと」が参加できる事業にする必要があると強く思います。健康福祉部、また大和市全体でこの事業について今後深く考え、制度の再構築に向けて検討していただくことを要望します。